ウィーン、我が夢の街(15)



 ウィーン・フィルのコンサートが終わり、夕食をとることにする。うさぎはこの後ホテルに戻るが、私は、さらに午後8時から、ウィーントーンキュンストラー管弦楽団を聴くため、あまり時間がない。そこで、カールスプラッツ地下駅のロータリーにあるピザ・ハットで軽く済ませることにした。

 私はスパゲティーミートソースを頼んだが、時間のないときに限って、なかなか出てこない。多少いらいらしたところに、やっと出てきた。スパゲティーといっても、オーブンで焼き上げているのでグラタン風にもなっている。まぁこういうところであるから味をあれこれいうつもりもなかったが、それなりに美味しかった。

 食事を済ませたうさぎは、地下鉄に乗ってホテルに戻っていった。時計を見るとまだ開場まで少し時間がある。そこで、いつもほぼ素通りしていた駅の地下街を少しのぞくことにした。ロータリーのところに切手やコインを売っている店がある。音楽関係のものも多少あった。ブルックナー没後100年のコインとかがあれば買ったのであるが、見当たらなかった。本屋では旅行社向けのガイドブックや地図なども売られていた。

 地下街を20分ほどのぞいた後、再び楽友協会のホールに向かった。午後7時半前ともなると、さすがに日が落ちて暗くなっている。また、雨がポツリポツリと落ちてきていた。そんな中をゆっくりゆっくりとホールに向かって歩いていく。考えてみれば、これが今回滞在中の最後の楽友協会でのコンサートになる。一歩一歩いつくしむように歩を進めていく。

 ホール前にはすでに開場を待つ人たちが集まってきていた。ウィーン交響楽団の時と比べると、さらに年齢層が高いように感じた。開場。コートをクロークに預ける。今度は、ステージ向かって身寄りの一階バルコニー席である。今までとは違うほうの通路をあがっていく。また例のごとく案内係りの男性にチケット店跡に案内してもらいプログラムを買う。

 バルコニー席は、ひとつの大きなブロックをひもで二つに区切り、それぞれのブロックの後ろに扉がついている。座席は床に固定されているのではなく、本当に家具調の椅子がただ置いて並べてあるだけであった。

 3日のウィーン交響楽団では、ステージ上の席から逆に平土間席を眺め、ウィーン・フィルでは前よりの平土間席。そして今回は、ホールの真ん中の通路より、ちょっと後ろで、ステージに向かって右サイドのバルコニーである。

 日本のコンサートの時も、ホールのサイドにある席(サントリーで言えばRBあたりか)は、結構気に入っている。奏者からわざと目を離し、聴きいっている聴衆の顔を眺めるのだ。あ〜、あの人は、今何を考えながら聴いているのだろうかとか...。

 席がわかったので、ホール内をもう一度散策する。パンフレットが置かれているところに、なんと、トスカニーニの絵葉書大のブロマイドが置かれている。1枚を自分用に、もう1枚を、トスカニーニの大ファンの知人へのお土産用にゲット。あとは、楽友協会の4月のコンサート案内のパンフレットを貰う。

 時間がたつにつれて、だんだん人があふれてくる。もともと狭い楽友協会ホールの通路がなおさら狭く、やかましい(笑)。座席に戻り、パンフレットを眺める。そのうち、私のボックスも全部埋まった。ブザーが鳴った。いよいよ最後のコンサートの幕開けである。


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