ウィーン、我が夢の街(16)


ルイジの「ブル7」 

ウィーン・トーンキュンストラー管弦楽団
日 時:平成10年4月4日(土)午後8時〜
場 所:ウィーン楽友協会大ホール
出 演:Franz Hawlata(Bar.)
    ウィーン・トーンキュンストラー管弦楽団(管弦楽)
    ファビオ・ルイジ(指揮)
曲 目:Ivan Erod/バリトンと管弦楽のための「クロコダイルの歌」
    ブルックナー/交響曲第7番ホ長調



 トーンキュンストラー管弦楽団というのは、名前はきいたことはあったが、実際に聴くのは初めて。ファビオ・ルイジという指揮者についても初めてであるが、来日公演のときのヴェルディのレクイエムがすごく良かったと聞いたことと、オペルン・バルで指揮をしたということを聞いたので、結構楽しみにしていた。

 前半は、7曲ほどの小品からなる組曲であった。作曲者のIvan Erodというのは、初めて聞く名前であったが、演奏の後、客席から紹介されていたので、あ〜現代の作曲家なんだ、と気がつくほどであった(^_^;)。でも、決して難解な曲ではなくて、ちょっとしゃれた節回しの、面白い曲であった。

 前半が終わったところで、喉が渇いたので、1階のカウンターに行き、ワンパターンの「ミネラルヴァッサー・ミット・ガス」を注文。早めに客席に戻りホールの内部を目にしっかりと焼き付けた。

 後半は、ブルックナーの7番。7番といえば、昨年の都響...いやいや、もうこれは言うまい。

カールスプラッツ地下街に貼られた演奏会のポスター



 静寂の中に、弦のさざ波が広がっていく。低弦が、さざ波の上を吹きわたるような美しさで主題を奏でていく。しだいに音が厚くなっていき、神々しいばかりに輝く管の響きがホールを包んでいく。

 ブルックナー特有のゲネラルパウゼのたびに、ホールに軟らかな余韻が残る。再び、さざなみの中から一筋の光が、そして光の束になって、ホール全体をおおい、パーッと散ったところで、第一楽章が終わった。

 第二楽章は、一転してすすり泣き、うねり、そして慟哭。ワーグナーチューバの響きがホールいっぱいに広がる。思わず目を閉じ、聴覚だけに集中し、音楽をすべて引き込もうとした。

 第三楽章、第四楽章は、本当にあっという間。特に第四楽章は、「まって。もっとここで楽しんでいたいのに。」という思いも通じることなく、最後の音まで一気に到達してしまった。

 少しでも長くホールに居たいという思いから、最後まで席を離れず、ゆっくりと階段を降りていった。外に出ると、小糠雨が落ちている。立ち去りがたい思いを引きずりながら、楽友協会を後にする。

 また、かならず、もどってくる。この聖地に。そう、自分に、言い聞かせながら。


続きを読む