お土産、というと、モーツァルトチョコレートとかエリザベートチョコレートとあたりが定番になっているようだ。しかし、これではあまりにも芸がなさすぎる。国立歌劇場近くに伊勢丹があるので覗いてみたが、なんだかな〜っていう感じ。
そこで国立歌劇場の付近を歩き回ってみたら、小さなチョコレート屋さんがあった。みると、定番のお菓子もあるが、たくさんのバラのチョコレートが置かれていて、いかにも「ジモティ」らしい人たちが、あれこれと選んでは買っている。よし。こういうところならいいだろうということで、店に入っていった。
太ったおばさんが愛想よく応対してくれた。勧められるままに、ナッツの入ったチョコ、ドライフルーツにコーティングしたチョコ、イースターのチョコなどを選び、ホテル・ザッハーのコーヒーとあわせて買った。チョコは既製の箱入りではなく、ビニール袋に詰めてくれたものであった。
イースターといえば、ちょうど我々がウィーンを訪れたのは、復活祭の直前だったこともあり、街中には、イースターの飾りつけがあふれていた。イースターといえばうさぎがシンボルになっているようで、どこに行ってもうさぎだらけ(笑)。お菓子屋さんにはチョコレートで作られた巨大なうさぎがならんでいた。あまりに街中にうさぎがあふれているので、うさぎは「うさぎの街、ウィーン。」などと言い出す始末だった。
お土産のチョコレートを買い、少し歩くと、ホテルザッハーの前に出た。帰る前には必ずここにきて、お約束のザッハートルテとアインシュペーナーを楽しむつもりである。
いつのまにか昼ちかくになった。今日は午後3時から、ウィーン・フィルの「マタイ受難曲」を聴くので、いったんホテルに戻り着替えをしなければならない。それに、あまり昼食をたくさん食べてしまうと眠くなってしまうので、カールスプラッツ駅地下のロータリーにあるスタンドでサンドイッチを買い、ホテルで食べることにした。いろいろな具があって迷ったが、ごくシンプルにモッツァレラチーズとフレッシュトマト、それとバジルの葉が挟んであるサンドイッチ。それとソーダ水を買った。
地下鉄でホテルに戻る。部屋のあるフロアに上っていくと、顔なじみになったメイドさんに出会った。「グリュス・ゴット」と声をかけると、向こうも笑顔で「グリュス・ゴット」と言ってくれた。しかし、一般の日本人観光客であれば、朝ホテルを出て行って夜まで戻らないのが普通だろうが(特にアナナスは団体客を多くさばいていることもあるし)、われわれのように、突然真昼に戻ってきたり、昼寝をしていたり、何度も出たり入ったりしていると、不思議な連中と思われているかもしれない(笑)。
部屋に戻り、サンドイッチを高くつく。バジルの香りがとてもよい。
一時間ほど休憩してから着替え、楽友協会に向かう。いよいよホームグランドで、ウィーン・フィルを聴くことができるのだ。
ホテルを出て、地下鉄に乗る。4日間で、何回カールスプラッツ駅とホテルとを往復したことだろうか。地下鉄のドアの開け閉めも、何のためらいもなくできるようになった。
駅を出て、環状道路の坂道を下っていく。途中で横道に入ったところが、楽友協会の建物である。すでにホール前にはかなり沢山の人が開場を待っていた。
中に入る前に、夜の、トーンキュンストラー管弦楽団のチケットを引き換えてもらうため、チケット売り場へ。すると前に日本人の男性が立っている。窓口のおばさんが、「正面に行け」と言っているようだ。見ると、これから開演するウィーン・フィルのチケットの予約券を持っていた。
その男性が行った後、私が窓口に行くと、私も同じだと思ったらしく、「正面に行きなさい。」と言っている。「ノー。トゥナイト・チケット。」と言って、予約票を出したら、「オウ。ソーリー。」と言って、すぐ引き換えてくれた。
正面に行くと、やっと扉の鍵が開けられた。クロークでコートを預け、ホールに向かう。階段を上がるところで、チケットをチェックする男性がいた。我々のチケットを見て、「階段を上がって直進しなさい」という趣旨と思われる案内をしてくれた。
平土間のフロアに入る。昨日と同じプログラム売り兼案内の男性にチケットを見せて、席に案内してもらう。不慣れなホールでは、お任せにしてしまうのが一番良い。席を探してもらい、例のごとくプログラムを買って、端数をチップにする。
開演までまだ時間があるので、ホール内を散策する。ただ、ウィーン・フィルのときは、結構チェックが細かく、立ち見のスペースの様子を観に入ることができなかった。
ステージに近いほうの廊下には、合唱団員と思われる人たちが出てきていた。
ブザーが鳴った。そろそろ開演である。