VPOの「マタイ」
OSTERKLANG WIEN MUSIKFESTIVAL
日 時:平成10年4月4日 午後3時〜
場 所:ウィーン楽友協会大ホール
出 演:Ruth Ziesak(Sop)/Ingeborg Danz(Alt)/ Rainer Trost(Evangelist,Tenor-Arien)
Matthias Goerne(Jesus)/Thomas Quasthoff(Bass)/Gachinger Kantorei
Stuttgart(Cho)
Wiener Philharmoniker
Helmuth Rilling(Dirigent)
ステージ中央を境に、左右にオケと合唱が一群ずつ配置されるというスタイルでした。
客席から見て左側のグループの第一バイオリンのトップはヒンク。右側のグループの第一バイオリンのトップはホーネックでした。
フルートは、ニーダーマイヤー氏とフルーリー氏。シュルツさんは出ていませんでした。
楽員と合唱が揃い、ソリストとリリングが登場すると、割れんばかりの拍手でした。リリングがおもむろに手を下ろすと、静かにマタイ受難曲の幕が切って落とされました。ソリストは比較的若手でそろえてきました。
「ウィーン・フィル」を聴くと言っても、この曲の主役はやはり声。合唱はさすがにリリングの子飼いの合唱団だけあって、勘所をつかんだ歌を聴かせてくれました。コラールとかのバランスもすごく良かったし。
ソリストは、どちらかといえば、女声の方が良かったような気がしました。とくに、キリストが捕らえられた後で、ペテロが、鶏が3度鳴く前までにキリストを3回「知らない」と言ってしまい、激しく泣いたという福音史家のレシタティーヴオのあとの第47曲のアルトのアリア。ヴァイオリンの独奏と絡みながら、切々と「我が神よ、憐れみたまえ。」と訴えるところは、あまりの美しさと切なさに、涙が出てきました。この曲が終わったところで、感極まったのでしょう、2階のバルコニー席から拍手がきこえたくらいでした。
途中で休憩が入るときに拍手が入ったのですが、その際、うさぎが突然喜色満面になりました。何事かと思ったら、真正面にフルートのニーダーマイヤーさんがいて、こっちを見て笑っている。ちゃんと覚えていてくれたのでした(*^^*)。
後半も、合唱、ソリスト、管弦楽が一体となり、キリストの死にいたるまでを、実に美しく、荘厳に奏でました。最後の複合唱「われら涙もてうずくまり」まできたところで、(ああ。これで終わってしまうんだ。)という名残惜しくもあり、満足感もありという複雑なきもちに覆われました。
最後の音が消えた後、しばし、静寂が楽友協会大ホールを支配し、少しずつ拍手の波が広がっていきました。リリングに、ソリストに、合唱に、そしてウィーン・フィルに、熱い歓声が投げかけられました。
こうして「ムジークフェラインでウィーンフィルを聴く」という夢は現実となり、そして心の中の奥深くに刻み込まれたのでした。