ウィーン、我が夢の街(11)


ウィーン交響楽団

日 時:平成10年4月3日(金)午後7時30分〜
場 所:ウィーン楽友協会大ホール
出 演:ウィーン交響楽団(管弦楽)
    ティル・フェルナー(ピアノ)
    レオポルド・ハーガー(指揮)
曲 目:モーツァルト  /交響曲 変ホ長調 KV184
    メンデルスゾーン/ピアノ協奏曲第2番 ニ短調 作品40
    ブルックナー  /交響曲第6番 イ長調


 初めて大ホールに入ったときは、感激で胸が一杯になった。今までテレビや写真でしか見たことがなかったムジークフェラインに、今、自分がいることが信じられなった。

 ルネ・コロに似た案内係の人にチケットを見せて、席まで案内して貰い、プログラムを買った。32シリングだったので50シリング札を渡し、「40(FORTY) BITTE」(英語とドイツ語の混合ですな(笑))と言って8シリングをチップに。この辺はガイドブックで予習していたので、うまくいった。

 押さえた席が、「Orchester」、サントリーでいえばP席に近いところと思ったが、行ってみてびっくり!ステージの雛壇に椅子をならべてある。客席というより、ステージで、一緒に演奏している気分である。二列前は第一ヴァイオリン奏者の席で、楽譜が良く見える。コントラバスの最後列や金管よりも、指揮者に近い段であった。楽器を持って演奏しても、違和感のない席である(^_^;)。ステージ袖から出てくる楽員と握手をして、親しそうに話をしているお客さんも。だって。楽員と聴衆の出入口が一緒なのだから。

 ビーという、何の変哲もないブザーが開演の合図。それでもお客が客席につかないので、3回くらい鳴っていた。

 いよいよ開演。指揮者のレオポルド・ハーガーの姿が袖にみえた。ハーガーといえば、昔はよくモーツァルテウム管弦楽団を指揮していたのを聴いたことがあったが、今日も、最初はモーツァルトの交響曲。

 ハーガーの指揮は、かなり大きな動作で、きびきびとしたものであった。曲もそれに応じてかなり早いテンポで進んだ。交響曲といっても非常に短く、切れ目なく20分ほどで終わり。最初は一楽章だけをやったのかと勘違いするほどあった。

 2曲目は、メンデルスゾーンのピアノ協奏曲。メンデルスゾーンにピアノ協奏曲があるというのは、今回初めて知りました。ピアノのフェルマーも初めて聞く名前であったが、非常に若い奏者であった。演奏は、非常にブリリアントな音色を聴かせてくれた。(ちなみに、フェルナーは、今年アルバン・ベルク弦楽四重奏団と一緒に来日する。)

 休憩になって、ロビーに出たら、物凄い混雑(^_^:)。ただでさえ狭いスペースに人があふれて、おしゃべりに興ずるものだから、うるさいのなんの。ミネラルウォーター(ガス入り)でのどを潤し、ほうほうの体で席に戻った。

 客席を眺めると、年齢層が高い。日本だとN響の定期が比較的聴衆の年齢層が高いか、そんな比ではない。ぢいさんばあさんの社交場といってもよい。

 後半は、いよいよブルックナーの6番。前半は少なかった管のメンバーがステージに勢ぞろい。
 ティンパニーはすぐ真横であった(^_^;)。

 拍手に迎えられたハーガーの棒が動き出す。「タンタタタタ、タンタタタタ・・・」ヴァイオリンが鋭い刻み。そして低弦が最初の主題を弱く奏で、ホルンとの掛け合い。

 そして、一気に爆発。ここを聴くと、いつも血が沸き立つような興奮を覚えるが、今回は普段にも増してカーッと燃えた。完全に自分も演奏に参加しているような気持ちになっていた。

 第一楽章の最後の、トランペットから始まる金管のうねり、そして解き放たれるような終了部分。ホール内に音が一杯に満ち溢れた。ハーガーも、満足げに指揮棒をおろしました。

 第二楽章は、どこまでも続くような弦の流れ。第三楽章は、一転して、時に寂しく、時には激しいスケルツォ。ここまでくるともうフィナーレは近く、まだ終わらないで欲しいという気持ちもかなわず、第四楽章の弦と金管の激しいまでの絡み合い。そして、第一楽章の主題を長調にした音型のコーダ。最後の音が完全に吸い込まれるまで、あたかも、すばらしい料理の最後の一匙までも楽しむかのように、誰も拍手をしない。

 そして、ふと我に返ったように、ゆっくりと拍手の波が広がっていく。ホール一杯に広がっていく。数回、ハーガーがカーテンコールで出てきて、あっさりとお開き。

 初めてのムジークフェライン体験は、あっという間に終わった。しかし、大好きなブルックナーを、ここで聴けたというのは、本当に喜ばしいことであった。

 ホールを出て、振り返る。「明日は、ついにウィーン・フィルだ。」と思いながら。


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