ウィーン、我が夢の街(17)


4月5日(日)

 窓を開けるとひんやりとしている。我々の泊まっていた部屋は、比較的低い(3階)であったということもあってか、大きく開け放つことが出来た。毎朝、「今日は、どんな天気かな〜」と窓を開けるのが楽しみだった。前半は、「100年ぶり」とかの暖かさで、ジャケットだけで外出できたが、後半は通常の年の気温に戻ったようで、薄手のコートを羽織って外出していた。

 朝食に降りていく。日本人の姿があまりない。例のごとく、黒パンと蜂蜜、トマト、スルランブルエッグ、ソーセージなどを取ってきて食べる。

 朝食を済ませて部屋にもどる。窓を開けると、どこからか、朗々と歌う声がきこえてきた。よし、対抗して・・・と思ったが、不審者と思われると困るのでやめた(笑)。

 身支度をして、部屋を出る。午前中は王宮を見学することにした。ホテルを出て地下鉄に乗る。シュテファンスプラッツで乗り換え、ヘレンガッセで下車。駅の改札を出たところで、中年の夫婦から話しかけられた。「ウィーン・カード」の使い方が判らないらしい。英語で話しかけられたので、片言の英語と身ぶりで、「ここに差し込むと、時刻がプリントされるので、このときから72時間自由に地下鉄やバスに乗れる。」という趣旨を伝えたら、理解して貰えたようである(たぶん(笑))。

 とりあえず王宮の付近にきたが、どこが入口かよく判らない。奥のほうに入っていくと、馬術学校があった。ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートの中継等で、休憩のときに映像が流れたこともあるので、ご存じの方も多いと思うが、あれである。今日は日曜日ということもあってか、入場券はすべて売り切れ。

 また、中庭のようなところには、フィアカーが沢山集まっていた。要するに馬車であるが、観光のポイントにはかならず客待ちのフォルカーがいる。フィアカーがいるということは、馬がいるということであり、馬がいるということは、落とし物をしていくということである(笑)。もちろん、そのままで放置されることはなく、御者がきちんと掃除をしていくが、時々街中に残骸があったりする(^_^;)。

 さて、あちこち歩いているうちに、ようやく王宮(博物館)の入り口を見つけた。中は大きく二つに分かれていて、最初がガラスケースのなかに様々な燭台や食器等を展示しているところ。そしてもう一つが、エリザベートの居室や謁見室等の部屋であった。展示されている家具、調度品などは、本当に立派なものばかり。凄いな〜とは思ったけれど、いくら立派な家具類に囲まれていたとしても、宮廷の息苦しいしきたりに縛られていてはねえ・・・。だからこそ、シシィ(エリザベートの愛称)は旅を友とする生活をおくらざるをえなかったのだろうなと思った。

 王宮をでたところに、立派な教会があった。本当にウィーンというのは、日常生活が文化財とともにあるという感じがする。うさぎに写真をとって貰おうとしたら、観光客らしい若い男女5人くらいが、うさぎの横でカメラを持って、私の写真をとるまねをしてふざけている(^_^;)。これも縁なので、一緒に入ってよと手真似をしたらたちまち、大集合写真大会(笑)。写真をとった後、みんなと握手をして別れた。なんでも、イタリアからきたとか。

即席国際交流写真撮影会(笑) フィアカーの前で


 すぐ近くに地下鉄の駅があったので(これも、ほんとに違和感なく作られている)、地下鉄に乗り、カールスプラッツへ。今日の昼食はケルントナー通りにあったお店でサンドイッチを買って食べることにした。

 日曜日でほとんどの商店が閉まっているというのに、通りにはかなり人が出てきている。目当ての店も、かなり人が群がっている。もたもたしていては注文を聞いて貰えそうもないので、意を決して、「ビスマルクサンド ウント ソーダヴァッサー」と注文。

 ビスマルクサンドというのは、鰊のマリネと玉ねぎを挟んだサンドイッチである。初日の夕方に食べたオードブルと同じである。かなり酸味がきついが、肉厚の鰊がパンからはみ出ているのを、落とさないように注意して食べる。

 食事を終えたのが正午前。午後2時からウィーンの森へのバスでの観光にでかけるのであるが、まだ時間があるので、一旦ホテルの部屋に戻ることにした。

 部屋に戻り、テレビをつけた。ホテルに入ってから、何回かテレビをつけてみたが、クラシックの音楽番組の類には出会わなかった。まあ、ちょっと足を運べば、数百円でオペラを立ち見できるのであるから、やるまでもないのかもしれないが...。

 このときは、チャンネルを変える手が止まった。見たことのある顔が画面に映っている。METの「レヴァイン・ガラ」の最後に「ホヨトホー」一発で満場を喝采の渦にした歌姫。ビルギット・ニルソンその人であった。

 勿論、何をいっているのかは全然わからないのだが(^_^;)、話がとぎれたところで、「トリスタンとイゾルデ」のかなり古い映像が流れた。振っているのはベーム!音楽がとぎれたところで、スタジオのニルソンにカメラが切り替わった。当時の自分を懐かしむような、何ともいえない表情であった。

 カメラは、同じく2人の元歌姫と思われる女性を映すが、誰か判らない。一人は、かなり分厚いレンズの眼鏡をかけている。古い映像がでたが、「どこかで見たけど」と思うものの、名前が出てこない。まさか日本の知人宅に電話をかけて聞くわけにもいかないし(^_^;)。そうこうしているうちに、出かける時刻になったので、番組の途中で外に出ることになった。

 地下鉄でカールスプラッツに出る。国立歌劇場の、アルカディアのあるほうと反対側が、観光バスの待ち合わせ場所である。

 「ウィーンの森半日観光」。今回の旅まで「ウィーンの森」というのは、市内からちょっと出たところに公園みたいなのがあるのだと思っていた。しかし、実際の「ウィーンの森」とは、アルプスの端のようなものと聞かされて、驚いた。

 バスは市内から外に出て、高速道路に入る。行き先表示に「グラーツ」「リンツ」というのが見えた。このまま走ればカール・ベームの生誕の地や、聖フロリアン教会があるのか・・・。オーストリアって、ほんとに凄いなと感心する。


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