ウィーン、我が夢の街(10)



 ホテルを出る前に、切手を買うためにフロントに立ち寄る。日本に航空便を出したいといったら、「1通13シリング」と言われたので、7枚ほど切手をわけて貰った。その場ではがきに貼り、カールスプラッツ駅のポストに投函。

 演奏会前に夕食をとる。初日の夕食をとったミューラーバイスルに行くことにした。

 初日に、料理を注文し過ぎて失敗したので、今日は二人とも慎重になっている。おまけに、演奏会を控えているから、食べ過ぎは禁物である。

 私はパラチンケンというクレープのような料理。中にはほうれん草のピューレが包み込んである。うさぎは、ゲミューゼ・プラッテという具合にやや軽く抑えた。飲み物は、私がノン・アルコール・ビール。うさぎはオレンジジュース。

 ともかく、こちらの野菜の美味いのには驚かされる。ジャガイモ、ブロッコリー、トマト...たっぷりと味わうことができる。パラチンケンの中に折り込まれていたほうれん草のピューレの緑色の、また美しいこと!

       ほうれん草入りのパラチンケン       我々が通いつめた「ミューラーバイスル」


 ほどほどにおなかを満たしたところで、お勘定。これで一人1000円ちょっとであった。

 店を出て、いよいよムジークフェラインザールに向かう。裏道をしばらく行くと、不意に広い通りに出た。あとは、昼間に来た道と逆方向に歩いていけば良い。食後の運動もかねて、街歩きを楽しむ。

 ムジークフェラインザール前の広場についた。すでに開場を待つお客さんがぽつりぽつりと集まってきている。建物にある掲示板には、これからのコンサートのポスターが貼られていた。4月末にホセ・カレーラスのリサイタルがあるが、これはさすがに売り切れ。他はまだ残っているようだった。

 見ると、明日の夜は、ウィーン・トーンキュンストラー管弦楽団のコンサートがある。ブルックナーの7番。昼にウィーン・フィルの「マタイ」を聴いて、夜にブル7...。でも聴きたい。しかし、「和歌山のハンスリック」との異名をとる(とらないって(笑))うさぎは、絶対に拒否するだろうな〜と思うと、言い出すのをためらってしまう。

 そうこうしているうちに、ホールのとびらが開いた...と言っても、別にパイプオルゴールが鳴るわけでもない。ただ鍵が開けられただけである。あとは自分で扉を開けて入って行く。中に入ると、まずクローク。ここでコートを預けた。さて...一体どこに行ったら良いのか、よく判らない。とりあえず、人の後をついていってみると、制服を着た人がいた。「グリュス・ゴット」と言って、チケットを見せると、階上を指差している。とりあえずあがってみることにする。


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