ウィーン、我が夢の街(9)



 再びカールスプラッツに戻り、今度は地下鉄2号線(U2)に乗る。バーベンベルグ・シュトラッセという駅で下車。

 美術史美術館というところに行くのであるが、ともかく「博物館のような建物」が沢山あって、何がなんだか判らない(^_^;)。町中が博物館のように見えてしまう。ここも、マリア・テレサの像を挟んで、一方の建物が自然史博物館(日本で言えば科学博物館か)、もう一方が美術史美術館である。

 昨日、市内観光に同行してくれたKさんの話によると、美術史美術館では、ブリューゲルの特別展をやっているからお勧めということであった。はたして美術館はなかなかの混雑であった。

 ブリューゲルの絵のところが物凄く混雑していたが、むしろ常設の絵画コレクションの方に興味をひかれた。とくに、ルーベンスやレンブラントの素晴らしい絵には、圧倒されっぱなしであった。また、ヴェラスケスやムリリョの絵には、ヴィクトリアに通ずる深遠なる響きを感じ取ることができた。

 そして、何よりも驚いたのは、これらの絵がガラスケースにも入っておらず、顔を近づければ、絵の具の盛り上がりまで見られるくらいに近くで見られること、そして各展示室(「室」なんてもんじゃなくて、一つ一つが「大ホール」といったほうがよい)に立派なソファーが置かれていて、そこに座ってゆっくりと鑑賞できることである。

 日本だったら、これくらいの絵の展示会をやるとなったら、入場料2000円、待ち時間30分、鑑賞時間30秒、混雑のなか立ち止まることも許されないという状況になるだろう。

 公の財産に対する考え方が違うのか...。公=国民と考えるか、公≠国民と考えるかの違いがあるのではないかと思わされた。

 ここでは、フラッシュ・三脚を使わない限り、写真もOKということだったので、デジカメ等で撮るには撮ったが、到底再現などできようもない。ともかく、精一杯目に焼き付け、心に書き留める事に腐心した。

 他にも彫刻や工芸の展示物などもあったが、一つ一つ丁寧に見ていては、日が暮れてしまうので、ルネサンス時代のものを中心に駆け足で眺めるだけにした。

 このあたりで、うさぎが「疲れた」と言い出した。私は古銭のコレクションを見たかったので、先にホテルに帰し、別フロアの古銭コレクションを見ようとした。ところが、特別展示(ブリューゲル展)をやっているため、古銭コレクションの展示はクローズであるといわれてしまった。

 しかたなく、一階のミュージアムショップへ。ウィーンを紹介したビデオ(日本のビデオの方式(NTSC)で録画されているかを確認することが必要)があったので、自分でビデオを撮る代わりに、これを購入した。

 美術館を出て、再び地下鉄に乗車。カールスプラッツ駅に戻ってきた。ここで、カールスプラッツ駅の地下街を少しのぞいてみる事にした。何回か行き来した際に、切手や古銭を扱っている店が2つあったので、気になっていた。

 音楽家シリーズの切手やコインもいくつか並べられていたが、どうしてもというものは見つからなかった。ブルックナーイヤーの記念硬貨でもあれば、食指が動いたのであるが...。多少気になるものもあったが、何でもかんでも買っているときりがないので、眺めるだけにしてホテルに戻る事にした。


 ホテルの部屋に戻ると、うさぎは昼寝をしていた(笑)。夜の演奏会には、まだ間があるので、絵葉書をとり出し、数枚追加で書いたあと、すこし横になった。

           我々の宿泊した部屋            ホテル・アナナスの正面


 そうそう。一つ2日目で書き忘れた事があった。オペラのチケットの事である。オペラのチケットは、ワールド・チケット・ぴあで予約し、ホテルに届けてくれる事になっていた。ただ何時届けることは事前には判っていなかった。

 2日目に、市内観光と市立公園の散策を終えて、部屋に帰ってきたときのこと、電話がなった。「ゲッ」と思い、恐る恐る電話に出た。するとテープのメッセージで「メッセージがあるから、9番をダイヤルしてオペレーターを呼べ」と言っている。

 やばいな〜。そんなこみ入った話できないぞと思いつつ、とりあえず電話を切った。しばらくすると、またベルが鳴った。出ると、また同じテープのメッセージ。どうも、こちらからコールバックするまで、止まらないようだ。腹をくくって、9番をダイヤルする。

 相手「ヤー」
 私 「アー、ルームナンバー2**。******、スピーキング。」
 相手「イエース」
 私 「ホエン、ウィー、カム、バック、トゥー、ルーム、アイ、リシーブ、テレフォン、《プリーズ、ダイヤル9》」
 相手「イエース」
 私 「エニー、メッセージ、フォー、ミー?」
 相手「イエス。ユー、ゴー、トゥー、オペラ?」
 私 「イエス」
 相手「アー、***************************」
 私 「・・・・・(やばい。わからない。)・・・・・」
 相手「ハロー?」
 私 「あ。イ・イ・イエース(うっ。聴いてないと思ったんだな。聴いてるけどわかんないんだ。それに、安易にイエスって言っちゃっていいのかな(^_^;))」
 相手「・・・チケット・・・トゥー・レセプション」
 私 「(おっ。ともかく、チケットがフロントに来るらしいな。)オーケー」
 相手「オーケー?」
 私 「イエース。サンキュー。」ガチャッ


 それから、しばらくしてから、また電話がかかってきた。今度はうさぎが出た。こっちも悪戦苦闘している。「ブーちゃん。なんかよくわかんないよ。」というので、もう一度出てみる。

 よーく聞いていると「カム、ダウン、レセプション」と言っている。そこで「ア〜、アイ、ゴー、トゥー、レセプション、インナ、フュー・ミニュッツ。オーケー?」と言ったら。「イエース。プリーズ」と言われた(^_^;)。

 電話を切り、うさぎと協議。うさぎは「今の電話は外からかけていた。1階のフロント前で待っていると、チケットを持ってくるということだ。」という見解。私は、「今の電話はフロントからで、もうチケットはフロントに来ているから、取りにこいということだ。」という見解。

 乏しい語学力を棚に上げて、お互いに自分の見解を譲らない(^_^;)。とりあえず1階に行ってみる事にした。

 1階に行ったが、それらしい人はいない。そこで、おそるおそるフロントに、部屋番号を伝えて、何かメッセージがあるかと聞いたら、「オペラに行くか」と言われた。「行く」というと、「チケットが来ている」と告げられ、チケットを渡してくれた。

 これで、気がかりだったオペラのチケットの事も解決したという次第。

 それにしても、何とひどい会話能力かと思われるだろう。でも、自分で意思を伝えようという気があり、相手の言いたい事を聞き取ろうという気があると、おおハズレにはならないようだ。堪能にペラペラと喋れれば、それにこしたことはないが、そうでなくても(というより、そこから程遠い会話力しかなくても)、なんとかやっていけるという見本のようなものと思っていただければ結構である。


 さて、少し休養して、いよいよ、ムジークフェラインに出かける。最初の演奏会である。身支度を整え、部屋を出る。


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