ウィーン、我が夢の街(2)


4月1日

 午前5時半に、眼が覚めた。

 自宅を午前6時前に出て、スーツケースをがらがらと引っ張りながら広い道に出る。1分もしないうちにタクシーが通りかかった。

 10分もかからずに新宿駅南口に。新宿発7時7分発の成田エクスプレスに余裕で乗車。車内で、新宿駅で買ったシャケ弁当を広げて、朝食。午前8時30分前に、空港第二ビルに到着。

 早めにチェックインを済ませる。満席で喫煙席にまわると聞かされ、タバコはともかく、そんなに混んでいるのか、と驚いた。

 銀行で30000円ほどオーストリアシリングに両替。あれこれと用事を済ませるうちに、搭乗開始時刻が近づき、搭乗デッキに向かう。集合時刻が8時45分と、出発の2時間前に設定されているが、のんびりしているとあっという間に過ぎてしまう。

 待ち時間内に、実家の母と、事務所に電話をした。

 乗った(というより、今乗っている)飛行機は、ジャンボで、全日空とオーストリア航空の共同運行便。一つの飛行機に、「全日空パリ行き」と「オーストリア航空ウィーン行き」という二つの便名がついている。別に小田急線のように相模大野で切り離して、箱根湯本行きと片瀬江ノ島行きに分かれるわけではない(^_^;)。

 待合室では、パリ行きということもあってか、「ブランドねーちゃん」の姿もかなり見られた。「ビトン20パーオフだって」とかといった「隠語」が飛び交っていた(笑)。

 搭乗すると、確かに、かなり混んではいたが、完全満席ではなく、喫煙席の真ん中(四人掛けのブロック)は1人しか座っていないところもある。

 離陸の時刻になったが、搭乗が遅れている客がいるとのことで、若干待たされる。結局、「客室乗務員はセレクターレバーをオートにしてください」というアナウンス(意味は判らないが、離陸準備が整ったときに入るアナウンスである)が入ったのは11時位だった。

 離陸後しばらくはかなり揺れたが日本海に出たあたりでほぼ安定。ドリンク・サービスの後、昼食(日本時間12時過ぎ)となった。

 食事のメニューは、サーモンのマリネ、パパイヤの生ハム添え、くらげと大根のマリネ、ハッシュドビーフ&ライス(または中華丼)、蕎麦とうどんを一口ずつ、ロールパン、アンニン豆腐、ワイン、といったところ。まあ、機内食であるからそうたいしたものはでないが、旅の途中の食事というだけで、数倍美味しく感じてしまう。

 食事をしながら、窓の外をふと見る。機体が左に大きく旋回したところで・・・思わず目をこらした。広大な海岸線。真っ白な地平。蛇行する河。ロシアだ。ついに未知の大地の上を飛んでいるんだ。


 幸い天候がよいため、9000メートルの高さからも、地上の様子が非常に良く見える。氷の大地、どこまでも続く山脈、凍り付いた河。ひときわ広く白い帯は、アムール川だろうか。ここまでで、約3時間飛行しているが、まだまだ先は長い。少し眠っておくことにしよう。

機内から撮影した大地の様子 左に同じ


日本時間4月1日 16:30
 眼が覚めた。映画の上映のため、窓のシェードをおろしていたから、良く眠れた。口が乾いたので水を飲み、窓のシェードを少しだけ上げてみる。絶望的なまでの、白い大地。イルクーツクから1000キロあたりを飛んでいるという表示が出ている。思わずデジカメを取り出して、写真を撮った。

 旅行代理店から渡されたオプショナルツアーのカタログなどをながめる。予定として組み込んであるのは、国立歌劇場の「リエンツィ」とVPOの「マタイ」。それと半日市内観光だけ。とりあえず、この半日市内観光でひとあたり全体をつかんでから、あちこち回ろうという寸法であるが、緩やかなスケジュールで、行き当たりばったりにしたいと思っている。せっかくウィーンに来たのだから、毎晩オペラか演奏会というのも良いが、私はともかく、うさぎがそれでは疲れてしまうだろう。来たければまた来れば良いというペースで進めるつもりだ。

日本時間4月1日午後10:00
 まだ、ロシアである。○と△のうたを実感する。西に向かって飛んでいるから、日が暮れない。普段ならば、宵の口だぜとかいいながら、まだ事務所で仕事をしている時間である。そろそろ、ウィーンの時刻に感覚を合わせないと、変になってきそうだ。
 モスクワを過ぎたあたりから雲が広がっていて、陸地は見えない。

 二回目の機内食は、鶏の雉焼きをのせた御飯。

 今、機長からアナウンスが入り、ウィーンの天候は晴れ。気温は摂氏17度。思いのほか暖かいので、ほっとする。

 少し眠っては、また眼を覚ますということの繰り返し。そうしているうちに、機体が高度を下げ始めた。シートベルト着用のサインがついた。茶色の地面が見えてきた。2回くらい旋回してから、ぐんぐん高度を落としていき、着陸。

 ウィーン時間の午後4時15分。ついにシュヴェヒャート空港についた。

 「パリまで行かれるお客様は、しばらくそのままお待ちください。」というアナウンス。5割以上が残っている。

 飛行機を出て、空港の建物に入る。入国審査を簡単に済ませ、荷物を受け取って税関を通過。出迎えの現地担当者に迎えられてバスに乗り込む。市内に向かう途中、高速が渋滞しているとのことで、一般道路に進路を変更。おかげで一足早い観光(中央墓地等の場所の予習)をすることができた。

 都市中央部に入ってきた。写真で良く見ていた路面電車が走っている。石畳の細い道、昔の雰囲気を残す町並み。何と素晴らしいながめだろう。

 そして、バスは無事、ホテルアナナス(パインアップルという意味)に到着。チェックインを済ませ、ホテル内の出店(朝8時30分から11時30分まで日本語の判るスタッフがいて、オプショナルツアーやコンサートチケットの手配などをしてくれるとのこと)の説明、そして帰国する日の確認だけをして、担当者は「では、ゆっくり楽しんでください。」で退去(笑)。やたらオプショナルツアーを薦めまくられたシンガポールとはえらい違いであった。

 ガイドブックでは、ホテルについたら、ポーターが荷物を運ぶので、チップが必要となっていたので、あわてて小銭に両替したが、ここでは自分で勝手に荷物を持って上がるシステムであり、チップは不要だった。

 部屋は3階(表示はセカンドフロアーゆえ2**号室)。入室後、荷物をほどく前に電話のジャックを見た。残念ながら通信は困難であることが判明。あっさりあきらめた(笑)。

 AC電源は、220ボルトでCタイプというコンセント。これは持っていったアダプタで対応できた。ただし、コンセントがくぼんだ形状になっているので、買っていった変圧器だけでは、コンセントのタイプはあっていても差し込むことができない。プラグアダプタを持ってきて、正解であった。

 10分程、ベッドで休憩。うさぎにせかされるようにして、ホテルの部屋を出る。まだ午後6時前。これから夕食をとるのだ。しかし、日本時間ではすでに午前1時を回っている。まだ身体がついていってないので、若干しんどい。しかし、ともかく歩いて時差ぼけを吹っ飛ばすことにする。


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