「妖気漂う演奏」と言ったら、ちょっとセンセーショナルな言いまわし過ぎるかも知れないけど、ともかくヴァント/NDRの初日・二日目を聴いた。凄いというか、生きていて良かったという感じ。わがままな依頼者やむかつく相手方代理人に苦しめられながらも、こんな演奏を聴けるなら、まだまだ長生きしたい(笑)。
演奏って、おおざっぱに言うと、「流れのある演奏」と「細かいところまで行き届いた演奏」というのがある。で、普通は両者は両立しない。流れがある演奏は、多少の疵には目をつぶってしまう。細かいところまで神経質に練り上げた演奏は、ときとしてかじかんだ手のような萎縮した音楽になる。
ところが、マエストロ・ヴァントはこの両者を実現させてしまった。細かいところまで細密画のように練り上げられていながら、決して音楽の流れは止まっていない。音のキレは抜群で、それでいてたっぷりと歌っている。こんな音楽やれたら最高。
今、合唱をやっていて、指揮者の先生から指摘されることは「音の立ち上がりははっきり。しかし中身はたっぷりと歌って」ということ。その答えがまさにヴァント/NDRの奏でる音楽の中にあった。
しかし、私だけが興奮していても仕方ない。ほんとは、合唱やってる人は器楽曲を沢山聴くと、イメージのストックが増えて、歌にも幅が出るのだけれど、合唱の人って、ほんとに合唱のたこつぼにはまっている人が多い。へた同志で聴きあうより、いいオケの曲を聴いた方が、ずっと表現力をつけるにはやくにたつと思うんだけどね。
まぁ、そんなことは別として、ともかくこの3日間は、自分にとってターニングポイントになるかもしれない。やっぱテーミスよりミューズでしょ。
10月の中旬に、「突発性難聴」になった。幸い、軽症で済んだが、一週間ほど病院通い(点滴)が続いた。原因は「ストレスと過労」(笑)。まあ、毎日事務所に0時近くまでいるような生活をしていれば、仕方ないか。
しかし、10月後半から、ウィーン国立歌劇場の来日公演(ナクソス島のアリアドネ、シャモニーのリンダ)、朝比奈/N響の「ロマンティック」と、なかなか良い演奏会が続いている。
そして、いよいよ今日から、ギュンター・ヴァント指揮のハンブルク北ドイツ放送交響楽団のコンサートが始まる。数年ぶりにキュンと胃が縮むような緊張感を味わっている。この3連戦、いったいどんな音楽を楽しませてくれるのか...。あと1時間ほどでホールに向かうところである。