スウェーデン放送合唱団


日時:平成11年9月10日(金)午後7時〜
場所:東京オペラシティコンサートホール
出演:スウェーデン放送合唱団(合唱)
   ステファン・パルクマン(指揮)
   マッティ・ヒルヴォネン(ピアノ)
曲目:バッハ/モテット「主を讃えよ、全ての異教徒よ」(BWV230)
   メンデルスゾーン/3つの詩篇曲作品78より「第22編 我が神、なにゆえわれを捨てたまいしや」
   ブラームス/6つの四重唱曲作品112
   R・シュトラウス/夕べ
   プーランク/小室内カンタータ「雪の夕暮れ」
   (休憩)
   ステンハンマル/春の夜
   ヴェルレ/樹々
   ユーハンソン/「ファンシーズ」より民謡集
   ペターソン=ベルガー/歌劇「ラン」より「ダンシング・ゲーム」
   アルヴェーン/夕べ
   エードルンド/3つの民謡「アントは私と踊る」「リンダ、私のリンダ」「15人のフィンランド人」
  (アンコール)
    武満徹/混声合唱のための「うた」より「さくら」
    ローベル・シェーン編「アレルヤ」

 8月はどういうわけかコンサートに一回も行きませんでした。秋のコンサートシーズンのスタートが、スウェーデン放送合唱団のコンサートになりました。
 ちょうど、この日の朝、BSで、N響とのデュリュフレ「レクイエム」とプーランクの「黒いマリアのための連祷」をやっていましたが、なかなか凄かっ たので、いっそう期待が高まりました。
 最初は、バッハのモテットでしたが、実に正確で、それでいて決して堅苦しさを感じさせない伸びやかな声を堪能させてくれました。メンデルスゾーン、ブラームスなどの古典は、アバド/ベルリン・フィルと 共演するときの、あの豊かな響きを楽しむことができました。
 そして、R.シュトラウスの「夕べ」。なんと16声部で、しかも極めて音域が広い。管弦楽曲のように多彩な音が鳴り響く難曲を、この合唱団は正確に、それでいて決して硬直したところなく、まるで愛唱曲でも歌うかのように、のびのびと聴かせてくれます。
 前半の最後は、プーランクの小室内カンタータでしたが、ともかく言葉の美しさには驚かされます。フランス語の場合、いわゆるシャンソンのようなものは格別、クラシック音楽には載せにくい面があって、妙にわざとらしい発音になったりすることがあるのですが、この合唱団の歌は、実に自然です。
 前半が終わって、休憩に入った瞬間、客席から、どよめきのようなものが聞こえました。別に変なことがあったわけではなく、前半の合唱のすごさへの驚きを、ほぼ全員が、つい、表に出してしまった...という感じでした。各パート8人前後なのに、なんであんなにダイナミクスのある声がでるのか。80人近くいても、全然声が響いてこない合唱団を聴いたこともあるので、なおさらこの合唱団のすごさを感じさせられました。
 ロビーに出ると、ものすごい熱気。これほど聴衆が興奮して語っているのをみたのは初めてです。CD売場などは近寄れない状態。このコンサートのチラシの裏面の推薦文を書いていた我が恩師S先生と話をしましたが、北欧の中でも、フランクなフィンランド、ドイツ色のついたデンマークと異なり、スウェーデンはノーブルでかつ純粋な文化を保ったことが、この合唱団の色合いにも通ずるところがあるのではないかということでした。
 後半の最初の曲は、ステンハンマルの「春の夜」。ピアノ伴奏付きで、ちょっと日本の叙情的な合唱曲に似たところもあり、胸が締めつけられるような美しさでした。「樹々」は、人間の声の機能の限界に挑戦するようなところがあったりしてなかなかおもしろかったです。民謡集では、「ダンシング・ゲーム」でリズミカルな明るい歌声を楽しませてくれたかと思うと、一転して「夕べ」では、心の中に浸み通っていくような静けさを堪能させてくれました。
 「3つの民謡」で全部のプログラムが終わり、アンコール。ちょうど、ステージちかくのバルコニー席だったので、上から楽譜が見えました。ショット版の...。指揮者の手が動き出すと、水を注ぐようなヴォーカリーズ。武満さんの「うた」から「さくら」です。この凄い合唱団で「うた」を全曲きければなぁ...と思いました。もう一曲は、「アレルヤ」。実に躍動的で、最後のソプラノはものすごい高音域でした。
 昨年の来日公演ではシュニトケの詩篇を聴きましたが(スウェーデンで録音した来日記念盤が出ていた)、今回の多彩なプログラムも実に素晴らしかった。指揮者のことをなんにも書きませんでしたが、パルクマンは、エリクソンに師事していたそうで、なるほど、非常にわかりやすく、無駄なく、歌いやすそうな指揮でした。
======================= 1999-09-11 (Sat)23:19:48 ====================

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