東京都交響楽団第492回定期演奏会(6月Bシリーズ)


日時:平成11年6月11日(金)午後7時〜
場所:サントリーホール
出演:東京都交響楽団(管弦楽)
    矢部達哉(ヴァイオリン)
    ガリー・ベルティーニ(指揮)
曲目:モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第4番ニ長調 K.218
    マーラー/交響曲第5番嬰ハ短調


 都響のプログラム冊子(月刊都響)がリニューアルされて、当月の定期演奏会だけではなく、作曲家の肖像やプロムナードコンサートの解説も入るようになりました。サイズも、最近はやりのA5版になって、保存しやすくなりました。印刷物を一種類にすることでコストダウンできているのでしょう。それでいて、カラー印刷の部分があったりして、結構楽しめます(今月はベルティーニのインタビューが目玉)。

 新理事長である石原慎太郎氏の挨拶も掲載されていましたが、紙面だけではなく、ご本人が直に聴きにこられていました(笑)。初めて「ナマ慎太郎」をみましたが、格好良かった。背が高くて、まさに「裕次郎のアニキ」ですね。

 余談はこのくらいにして、演奏に。

 最初のモーツァルトのヴァイオリン協奏曲ですが、ソリストが矢部さんということで、コンサートマスターがどうなるのか(都響のコンサートマスターは現在矢部さんだけだから)と思ったら、ゲストコンサートマスターとして、鈴木理恵子さんという方が入っていました。

 ちなみに、Aシリーズのほうは山本友重さんというかたがゲスト・コンサートマスターに入っています。

 矢部さんは、序奏の間、ずっとP席のほうを向いていて、そのまま楽器をかまえたので、え?と思いましたが、ソロになったら正面を向いて弾き出しました。5月のN響定期でも、堀さんがソロを弾いてモーツァルトのヴァイオリン協奏曲を弾き、今回も団内ソリストでしたが、実に呼吸があっていて気持ちの良い演奏を楽しむことが出来ました。矢部さんは5月の定期ではシェーラザードで独奏を聴かせてくれて、2ヶ月続きでソロを楽しませてくれました。

 後半のマーラーでは、矢部さんがコンサートマスターに入り、鈴木さんは、矢部さんのとなり(フォアシュピーラーっていうんでしたっけ?女性になると名詞は変化するのかな)で弾いていました。

 で、このマーラーの5番ですが、3度目にして遂に大爆発。就任披露の「復活」では期待が大きすぎたか、やや不完全燃焼で、3番ではまずまずの演奏を聴かせてくれたベルティーニ/都響が、いよいよノッテきたという感じがしました。

 指揮台に上がったベルティーニ、微動だにしません。客席がまさに無音となったのを確認して、右手をほんの少しだけ、動かします。まるで空間からひきだされたようなトランペットの奏でる葬送行進曲。全く疵のないメロディーがホール内に鳴り響き、そして全楽器がエネルギーをほとばしらせました。

 ベルティーニの指揮は、イン・テンポを基調として、ややあおり気味という感じ。実にきびきびとしたマーラーでした。また、決して楽器を吠えさせないので、最初は物足りなさを感じたこともありましたが、うねり、漂うようなマーラーの音楽を心地よく楽しませてくれました。特に3楽章のホルン、それから、弦のピチカートで演奏するところが、なんともいえない寂しさを漂わせていて、泣かせてくれました。

 1・2楽章はアタッカで演奏し、3・4楽章の前にやや長めの間合いを置き、4・5楽章はほぼアタッカという、私好みの区切り方もうれしかった。
======================= 1999-06-13 (Sun) 23:15:55 ====================


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