NHK交響楽団定期演奏会(99年5月Cプロ2日目)


日 時:平成11年5月25日(土)午後2時〜
場 所:NHKホール
出 演:堀正文(Vn)
     NHK交響楽団(管弦楽)
     アンドレ・プレヴィン(指揮)
曲 目:モーツァルト/ディヴェルティメントニ長調K.251
             ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K.216
             交響曲第38番ニ長調K.504「プラハ」


 ある草の根BBSで知り合った音楽好きの知人に、ウィーンからはがきを出しました。日本に戻ったら、メールでお返事をいただきましたが、そこに書かれていたのは、お義父様の急逝。3月に入院され、4月初旬に亡くなられてしまったと。昨年のウィーンからのたよりを、とても喜んでいただけたとか(残念ながら、今年のたよりは間に合わなかった)。
 そして、その知人から「よかったら、義父のかわりに聴いてほしい」との申し出をうけ、謹んで頂戴したのが、この日のチケットでした。お義父様は、長年N響の定期会員で、ずっと継続されていたのですが、今シーズンは3カ月しか継続されなかったそうで、あるいはご自身で何かを感じておられたのかも知れません。

 そんなわけで、この日の演奏会には、会ったこともない知人のお義父様の魂と一緒に、NHKホールに向かうような厳粛な気持ちで足を運びました。

 演奏は、そういった私を「まあ、そう気張らずに(笑)」と、軽やかに受けとめてくれる、実に暖かなものでした。プレヴィンという名前は、もちろん知っていましたが、ピアノを弾いたり(キュッヒル&プレヴィンのデュオのCDなどは、すばらしいです)、作曲をしたりと、えらく多芸多才という印象で、指揮者として「絶対聴いてみたい」というモチベーションは、今までありませんでした。

 しかし、実際に指揮を見て、オケから出てくる音を聴いていると、「これは・・・」とうならざるをえませんでした。プレヴィンの指揮には、全くといっていいほど無駄な動きがなく、的確にオケをリードしており、小編成のN響が、まるでもともと室内オーケストラであるかのごとき演奏をしているのです。スクロヴァチェフスキのときに演奏されたモーツァルトの交響曲第29番もなかなかの名演奏でしたが、今回のモーツァルト・プロは、それをも凌ぐものでした。

 それと、注目していたのが堀さんをソリストに迎えてのヴァイオリン協奏曲。ふだん、コンサートマスターとして、非常にクールな立ち居振る舞いを見せている堀さんが、ソリストとしてどんな演奏を聴かせてくれるかという点でした。まあ、曲がモーツァルトということもありますが、実に軽快であり、それでいて決めるところは実に豊かな音色を聴かせてくれました。

 終演後に団員から送られる拍手も、外部のソリストに対するものとはちょっと違って、身内に素晴らしいソリストがいることに対する喜びのようなものを感じました。堀さんは、ふだんと同様、ポーカーフェイスでしたが、団員から送られる拍手に、ちょっと照れくさそうな顔をしていて、それがなかなかよかったです。

 最後のプラハも、実に引き締まった演奏で、普段、積極的にモーツァルトを聴くことのない私(ブルックナーとのカップリングが多いので、結果的にはかなり聴いているのですが)をして、「いいもんだねえ」と思わせてくれました。

 知人のお義父様は、3月のVPOは闘病生活で聴けなかったけれど、この日のN響の演奏で、満足していただけたと思います。VPOといえば、なぜ、VPOがプレヴィンを指揮者としてたびたび招いているのか、この日の演奏を聴いてわかるような気がしました。  で、知人のお義父様を、このままお帰しするのも・・・ということで、さらにサントリーホールに御連れしました(笑)。
======================= 1999/06/20(Sun) 20:27:15 ====================


コンサート・レポート99目次に戻る