朝比奈隆/新日本フィルハーモニー交響楽団特別演奏会


日時:平成11年4月11日(日)午後3時〜
場所:すみだトリフォニーホール
出演:新日本フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)
   朝比奈隆(指揮)
曲目:チャイコフスキー/弦楽セレナードハ長調 作品48
              /交響曲第6番 作品74「悲愴」


 ウィーンから帰って最初の演奏会であった。どうも時差ぼけが完全に直りきっていないようで、眠い。会場について席につき、20分ほど目を閉じて仮眠してしまった。開演前のベルで気持ちよく目が醒めた。

 朝比奈先生の演奏会に接するのは、昨年の10月の都響以来。一昨年後半から昨年前半までは、ベートーヴェンチクルスがあったので、2ヶ月に一回は聴いていたのだが...。

 最初の弦楽セレナードから、ボリュームたっぷりの音楽。弦は小編成ではなく、フル編成であった。
 第1楽章は、一つ一つの音をキッチリと決めながら進行していく。途中の小刻みなパッセージのところも一個ずつ「タカタカタカ・・・」とはっきりと切って丁寧に弾かせていた。休止符のところは、まるでブルックナーのゲネラルパウゼを思わせるくらい思いっきり休止していた。第2楽章は一転して軽やかなワルツ。後半で演奏される悲愴の第2楽章を思わせるような美しさだった。第3楽章はしわぶきひとつ聞こえない静寂のなか、切々と奏でられるエレジー。そして第4楽章、最初静かに始まり、途中から一転して躍動的な旋律が奏でられる。

 全体を通じて、弦の豊かな響きをたっぷりと堪能させてくれるすばらしい演奏だった。1月のN響B定期でスクロヴァチェフスキの振った「大フーガ」のボリュームも凄かったが、今日の弦楽セレナードもそれに匹敵するものだった。

 そして、聴衆のすばらしさ。雨天で、傘を持った客が多かったにもかかわらず、傘の倒れる音はほとんどといって良いほどなかった。またフライングの拍手もなく、響きがホールから完全に消えてから割れんばかりの拍手。

 休憩にロビーに出てみたが、どこに行ってもごった返している。トリフォニーは、お客さんが満員になると、バーカウンターはもちろん、ロビーもトイレも人があふれて、どうしようもない状態になる。もっとも、ウィーンの楽友協会ホールも、休憩時の売店やロビーは同じような状態だから、設計者は、日本に居ながらにしてムジークフェラインの雰囲気を味わうことができるように「配慮」してくれたのだろう(笑)。席に戻り、また、少しだけうたた寝をする。

 後半の「悲愴」。こちらも、予想通り、やや遅めのテンポで堂々とした演奏。第3楽章の物凄いエネルギーの発散。そして第4楽章の冒頭の泣き崩れるような弦の響き。そして、まるで真空の中にホール全体が投げ込まれたような、無音の幕切れ。実に見事だった。

 しかし、かなりこの2曲、エネルギーを消耗するとみた。朝比奈先生はオケといっしょの答礼の段階でかなり長時間拍手を受けられた。お客さんも、それを悟ってか、「参賀」は1回であっさりと解散。お元気だといっても、今年の前半で91歳。でも、2000年の3月には都響とブルックナーの5番。そしてN響への客演も決まっている。是非、ストコフスキーを超えてほしい。
======================= 1999-04-11 (Sun) 23:15:38 ====================


コンサート・レポート99目次に戻る