NHK交響楽団定期演奏会(99年1月Aプロ/初日・二日目)


日 時:平成11年1月21日(木)・22日(金)午後7時〜
場 所:NHKホール
出 演:コンスタンティ・クルカ(Vn)
    NHK交響楽団(管弦楽)
    スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ(指揮)
曲 目:シマノフスキ/ヴァイオリン協奏曲第1番 作品35
    ブルックナー/交響曲第7番 ホ長調


 3年間待ったミスターSが、ようやく再来日を果たしてくれた。前回の来日では、シューマンの交響曲第4番をはじめとする多彩な曲目で、N響から実にすばらしい響きを引き出してくれた。今回はまた、ミスターS好みのプログラムでの満を持しての再来日。期待も高まる。

 最初のシマノフスキのヴァイオリン協奏曲は、なんとも不思議な音色。たしか「アレトゥーザの泉」というヴァイオリン独奏曲を聴いたことがあった。その節回しと同じような感じだった。途中のカデンツァの、なんとも艶やかなヴァイオリンの音色には、息を呑むようにききいってしまった。

 後半のブルックナーの7番。これはもう奇跡が起こったとしかいいようがない。特に初日はよい意味での緊張が会場全体を支配し、奏者・客席が一体となって、究極の名演を作り上げたといえよう。ミスターSは、来日にあたり、ザールブリュッケン放送交響楽団と録音した際に使用した(と思われる)書き込み入り楽譜(パート譜も)を持参し、ボーイング等はすべてこのようにやってくれと指示したとか。

 冒頭、小さく棒が動くと、ほんとうにきこえるかきこえないか位の大きさで弦のトレモロがなりだす。会場の空気が凝縮し、ステージに集中していくのがわかる。そのなかでゆったりと、チェロの旋律が流れ出す。凄く息が長い。これは、チェリビダッケなみの凄いテンポでいくのか...と思いきや、一転して実に引き締まったテンポへ。あとは、もう、縦横無尽にN響をコントロールして、すばらしい響きを作り出して行く。

 第二楽章の冒頭の金管の哀感を帯びた響きのあとで、慟哭のような弦楽の響き。ここでも低弦が「グワン」とものすごい分厚い響きで入ってきた。そして、ワーグナーチューバ等の金管のコラールの部分は、決して吼えさせない。一歩押さえてふかせているという感じ。したがって、音が荒くならず、バランスもよく、まさしくオルガントーンがホール一杯に鳴り響いた。

 ワーグナーの死を悼むモチーフから、静かに、静かに音が消えていく。静寂の世界。ふと、聖フロリアンの鐘が頭に浮かんだ。

 第7番は、えてして第3・第4楽章が今一つと言われているし、今まで聴いた演奏でも、多くはそうであったが、今回の演奏では第3・第4楽章も決して軽いものではなかった。第3楽章では、トリオに入る前のところで、凄く長いゲネラルパウゼをつくり、緊張感を漲らせた。第4楽章は、やや早めのテンポで、ときどき陰の旋律を浮き立たせたりして実に立体的な曲作りで楽しませてくれた。

 初日・二日目を比べると、完成度は初日の方が高かった。二日目は、少し緩んだような感じで、ミスターSの場合、「ゆるみ」が良いほうに作用するタイプの指揮者ではないようだ。ただ、二日目の方が聴衆の反応はよく、終演後の心地よさは甲乙つけがたいという感じだった。
======================= 1999-02-07 (Sun) 22:45:59 ====================


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