新日本フィルハーモニー交響楽団トリフォニーA定期(12月)


日 時:平成10年12月4日(金)午後7時15分〜
場 所:すみだトリフォニーホール
出 演:新日本フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)
    高関 健(指揮)
曲 目:ブルックナー/交響曲第8番ハ短調(ハース版)


 ブルックナーの8番というのは、自分にとって特別の思い入れのある曲で、この曲を聴くことは、一つの儀式となっています。与えられて聴くということはなく、すべて自らそのコンサートを選び出して足を運んできました。

 しかし、今回は、初めて「一連の定期演奏会のうちの一曲」という形で、この曲と接しました。ですから、普段に比べて、そう強い気持ちを持たずにホールに赴きました。

 ところが、私を迎えてくれたのは、今までのブル8体験の五指に入る好演でした。

 一言で言えば、「隅々まで血の通ったブルックナー」とでも言いましょうか。細部にわたるまで音譜を慈しむような演奏。それでいて、決してチマチマとしたものではない。

 金管は最初から最後まで衰えることなく、たっぷりとした響きを堪能させてくれました。そうそう。ホルン(ワーグナーチューバ)セクションにはトラで千葉馨さんが入っていて、最初にこれに気がついただけでワクワクしてしまいました。

 高関さんの指揮は、ゲネラルパウゼを意識して長めにとり、テンポはややゆっくり傾向。ヨコをたっぷりと歌わせながらも、タテはビシッと合わせるから、充実したものになるのは当然でしょうが、これが実際に出来るのが凄い。

 朝比奈先生のブルックナーは、ともかくデカイ大理石みたいのをドンドンと積み上げていき、最終的に有無を言わさぬ壮大な構築物をつくりあげていくという感じで、材料が良いと、今年の夏の大フィル東京公演のブルックナーの5番や、昨年の3月のN響定期のブルックナーの8番のような超好演になるのですが、先日の都響の初日(定期)のように、素材(オケ)が「す」の入った軽石みたいなのだと、空しさが残ってしまいます。

 今回の高関さんのブルックナーは、第1楽章からジワジワと組み立てていき、知らず知らずと聴衆を引き込み、最終的には壮大な感動を与えてくれるというなかなか凄い音楽作りで、しみじみとした感動が残るという演奏でした。
======================= 1998-12-06 (Sun) 20:49:38 ====================


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