N響オーチャード定期 第2回定期演奏会


日 時:平成10年11月24日(火)午後7時〜
場 所:Bunkamuraオーチャードホール
出 演:松崎 裕、樋口哲生、大野良雄、一色隆雄(ホルン)
    NHK交響楽団(管弦楽)
     ウォルフガング・サヴァリッシュ(指揮)
曲 目:「オール・シューマン・プログラム」
    序曲「ヘルマンとドロテア」作品136
    4つのホルンのためのコンツェルトシュテュック へ長調 作品86
    交響曲第4番 ニ短調作品120(第2版)
   (アンコール)
    ブラームス/ハンガリー舞曲第1番


 交響曲第4番の聴き比べ。11月6日の初稿との聴き比べはもちろんですが、一昨年のスクロヴァチェフスキの鬼気迫るような演奏との聴き比べも楽しみでした。そんな目的で足を運びましたが、前半も実にいい演奏でした。

 まずは序曲「ヘルマンとドロテア」。初めて聴く曲でしたが、途中で「ラ・マルセイエーズ」のフレーズが出てきたりして、なかなか面白かったです。

 4つのホルンのためのコンツェルトシュテュック。N響の誇るホルンセクションの4人が、最前列に並んだ様は壮観でした。もの凄い速いパッセージがあったり、すごく高い音があったり、一転して朗々たるホルンアンサンブルになったりと、超絶技巧ホルン協奏曲とでもいったところでしょうか。プログラムに4人のホルン奏者のインタービューが出ていましたが、なかなかの難曲のようでした。あれだけたっぷりとホルンの醍醐味を楽しませてもらえるとは。

 演奏後は、客席から盛んにブラーヴォが飛んでいましたし、オケのメンバーも4人に拍手を送っていました。

 休憩中にロビーに出て、お客さんの会話に耳を傾けていると、「あのポーーーッっていうところ凄いよね。」とか「なんであんな高い音出るんだろう。とても人間ワザとは思えないよ。」など、多分ホルンを自分で吹いている人でしょう。ホルンの凄さが話題になっていました。

 休憩後は、いよいよシューマンの4番。そもそも、私がシューマンの4番を初めて聴いたのもサヴァリッシュ/N響で、今から15年以上前だったのではないかと。

 最初の音。昔のサヴァリッシュの演奏では、結構浅い音でした。スクロヴァチェフスキの演奏では、「ズァーーーン」という、一度クレッシェンドをかけているのではないかと思うくらいの分厚い響き。今回の演奏は、その中庸くらいでしょうか。かなり分厚い音で始まりました。

 10小節目あたりで、ヴィオラとチェロが裏メロを奏でるところ。スクロヴァチェフスキは、こういうところを意図的に強くひかせて浮き立たせるのが得意ですが、サヴァリッシュのは実にオーソドックスな響き。

 それから、もう、これはヲタク的というか「木を見て森を見ない」類かも知れませんが、気になったところ。私の持っている4番(第2稿)のポケットスコアの練習番号Eのところで、金管と弦が同じリズムを刻むのですが、フレーズの最後(135小節の頭)で、金管は8分音符、弦は4分音符という形になっています。

 スクロヴァチェフスキは、私が聴いた限りでは、弦を金管に合わせて8分音符にして弾かせていたように感じました。

 先日の4番の第1稿では、スクロヴァチェフスキのときと同じように、8分音符に聴こえました。今日の第2稿では弦は4分音符、管は8分音符という演奏でした。これは素人の推測でしょうが、初稿は両方とも8分音符になっていて、スクロヴァチェフスキは初稿を組み入れたのかもしれません。

 ま。そういう細かい話は別として、演奏は非常に自然で、ほとばしるような演奏でした。一方、第二楽章のロマンツェ。茂木さんのオーボエと藤森さんのチェロ、そして篠崎さんのヴァイオリンのソロが、晩秋の柔らかい日差しのなかで舞う枯葉のような、はかない美しさをたたえていました。

 第三楽章から第四楽章へのつなぎの部分も、あくまでも流れのままに。スクロヴァチェフスキのは、テンポをぐっと落として、まるでブルックナーの8番のコーダのところのような作り方で、これはこれで面白かったですが。

 活き活きとしたフィナーレ。客席も非常に盛り上がり、終演後は拍手が続きます。すると舞台袖から2人団員が。「え?まさか。」と思ったら、サヴァリッシュが出てきて、棒を一閃。最近はやりのアンコール・ピース(笑)。ブラームスのハンガリー舞曲の第1番でした。ノリノリの素晴らしい演奏でお開き。
 1月はABC定期全部とオーチャード定期の「皆勤」という暴挙(^_^;)に及ぶ予定です。
======================= 1998-11-24 (Tue) 22:32:59 ====================


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