日 時:平成10年10月24日(土)午後7時15分〜
場 所:すみだトリフォニーホール
出 演:ヨーヨー・マ(チェロ)
キャサリン・ストット(ピアノ)
曲 目:バッハ/無伴奏チェロ組曲第6番ニ長調 BWV.1012
ブラームス/チェロソナタ第2番へ長調 作品99
ピアソラ/孤独
リベルタンゴ
追憶のタンゴ
タンゴ組曲より アンダンテとアレグロ
言葉のないミロンガ
ル・グラン・タンゴ
(アンコール)
エルガー/愛の挨拶
ガーシュウィン/プレリュード
クライスラー/愛の悲しみ
私の演奏会傾向は、オケと歌ものが大半を占めます。たまには、多少違う傾向のものをと思い、選んだのが、この演奏会でした。たまたま、トリフォニークラブから追加公演のお知らせのDMが来て、プログラムの後半が、先日買ったCDに収録されているピアソラだったというのがきっかけです。
9月に入って告知のあった追加公演ということで、そんなに売れていないのではないかと思ったら、とんでもない!チケットは売り切れ。会場前では女性ファンが5人くらい「ずーへ・かるて」をやっていました。あとでプログラムを買って判ったのですが、この日が、ピアソラの作品を一番多く聴けるものでしたので、そのあたりも関係しているのか...。
客席も、若い女性のファンが凄く多くて、香水の香りがあちこちでただよっている。普段、全くと言っていいほど逆の客層の演奏会に多く足を運んでいたので(^_^;)、とまどいを感じるほどでした。
ヨッヘン・コワルスキーのときは、連作歌曲の1曲ごとに拍手を入れるという大馬鹿集団に席巻されたので、だいじょぶかいなと思ったのですが、その心配は杞憂でした。それどころか、久々に「呼吸にも気をつかう」ような、心地好い緊張感の漂った演奏会を味わうことができました。
まず、バッハの無伴奏チェロ組曲。ここで一気に「ヨーヨー・マの世界」に支配されました。ステージに出てきて、拍手が鳴り終わり、まだ空気が落ち着くか否かのタイミングで、いきなり弓を走らせました。客席は一瞬にしてシーンと静まりかえります。あとは息をのむようにしてステージに集中。その中で、チェロの音色だけが、よせてはかえす波のようにホールを満たしていきます。
チェロの演奏そのものは、オーケストラや室内楽でよく接しているのですが、そういったものと比べて、ヨーヨー・マの演奏する姿は、かなり動きのあるもので、ときにはチェロを身体から大きく離して弾いたりすることもあり、ちょっと驚きました。
曲間もほとんど休みをとらずに、前へ前へと進んでいく演奏に、みな惹き込まれるように聴きいっていました。
2曲目はブラームスのチェロソナタ。これも私は初めて聴く曲です。交響曲で言うと、第3番のような雰囲気とでもいいましょうか、ピアノの激しい前奏から入り、速く生き生きとしたチェロの旋律が流れ出します。あとはブラームス独特の重厚さと、内に秘めた愛らしさをひたすら堪能しました。
ここで休憩。ロビーに出ると(ここのロビーは狭いので閉口しますが)、CD売り場が普段にも増して大混雑。まぁ、あれだけのすばらしい演奏を聴かされれば、CD売り場に走りたくなるのも人情でしょう。
後半は、おそらく多くのお客さんがお目当てのピアソラ。
前半は、ブラックスーツに蝶ネクタイというスタイルだったヨーヨー・マが、織柄のストライプのスーツにノーネクタイというスタイル(ビデオクリップでもおなじみですね)で登場。
バンドネオンもなしで、ピアノとチェロだけですが、艶やかな音楽をたっぷりと聴かせてくれました。CMで使用されているリベルタンゴはもちろんですが、言葉のないミロンガ、そしてグラン・タンゴなども素晴らしい演奏でした。
アンコールの1曲目。チェロの深く柔らかな音色で、あのメロディーが流れてきました。なんとも慈しむような音色で、子守り歌みたいで、後ろで泣いてる人若干名(^_^;)。
2曲目は一転して、ちょっと小粋でコミカルな節回し。ガーシュウィンのプレリュード。
そして3曲目は、ヴァイオリンのリサイタルではよくアンコールで弾かれるクライスラーの小品。チェロで聴くと、また違った感じがしてよかったです。
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