ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団日本公演(Bプロ)


日 時:平成10年10月18日(日)午後7時30分〜
場 所:サントリーホール
出 演:エマニュエル・パユ(フルート)
    マリー=ピエール・ラングラメ(ハープ)
    ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(管弦楽)
    クラウディオ・アバド(指揮)
曲 目:モーツァルト/フルートとハープのための協奏曲ハ長調 K.299
    (アンコール)
    ビゼー/歌劇「カルメン」より第三幕への前奏曲
    ブルックナー/交響曲第5番変ロ長調(ノヴァーク版)



 ベルリン・フィルを生で聴くのは、1981年以来のことです。当時はカラヤンの統治下でした。たしか、来日直前に、招聘元の新芸術家協会が倒産し、TBSがあとを引き継いで公演にこぎつけたということがありました。そのためか、TBSではカラヤン/ベルリン・フィルの特番があって、ゲストが当時現役の最晩年か引退直後であった野村克也氏、それから女優の藤真理子、そして小沢征爾という全く話のかみ合わない3人でした(^_^;)。

 あれから17年...。チケットの価格は50パーセント近く上昇し、獲得競争は激化し、なんだか演奏会から「ゆとり」が失われていくような...。ま、それはともかく。

 前半は、「ベルリンフィルハーモニー室内管弦楽団」と言ってもいいような小編成。こういう小編成のベルリン・フィルを聴くのは始めてでしたが、これはこれで実にいい。引き締まったアンサンブルで、ハープとフルートをサポートしていました。ソリストはとくにフルートのパユが絶妙でした。

 拍手に応えて、ここでアンコール。フルートとハープをフィーチャーした曲ということで、カルメンの第3幕への前奏曲が演奏されました。これは、モーツァルトの快活さとは打って変わって、しっとりとした情感あふれる演奏を聴かせてくれました。

 後半は、ブルックナーの5番。5番を演奏会で聴くのは、今年になって4回目です(^_^;)。

 感想は、覚悟していたとおり、自分の好きなタイプのブル5ではありませんでしたが、納得のいく演奏でした。

 アバドは、かなりテンポを揺らし、縦を合わせるというより横の流れを重視したアプローチをとるようです。ですから、楽譜の縦線をビシッ、ビシッと合わせるという感じではないため、オルガンのキーを一度に「ジャーン」と押して和音を響かせるというような、ブルックナー特有の音色からは少し離れたように感じました。第4楽章の練習番号Z以降の部分も、かなりハイテンポで、陶酔感に浸るまもなく最後の音が消えてしまったという感じでした。

 しかし、それをも補って私を圧倒したのは、ベルリン・フィルというオーケストラの、演奏に対するパワーでした。今回はあまり良い席をゲットすることが出来ずS席といっても1階最前列のヴィオラの末席の正面あたりでした。しかし、奏者の顔を見ていると、半端じゃないのです。第1楽章から、一番末席の弦の奏者が、顔を真っ赤にして、隣のメンバーと競うようにしてひいているのです。

 日本のオケとかだと、往々にしてコンサートマスターは必死でオケを引っ張っているのに、弦の末席あたりは、われ関せずみたいな顔で弾いているのを目にします。もちろん、弾きながら身体を揺らせば熱意があるいい演奏と決まるわけではありませんが、それにしても、見るからにつまらなそうに弾いているときがあって、聴くほうの気持ちがさめてしまうことがあるのです。

 ベルリン・フィルは、出てくる音も幅広く、第2楽章ではうねるような弦の絡みを聴かせてくれたかと思うと、第3楽章では疾風怒涛のような演奏、そして第4楽章では分厚い金管のコラールをホール一杯に鳴り響かせる(残念ながら、大伽藍がそびえたつまでにはいきませんでしたが)といった、一流のオーケストラの凄さを目の当たりにすることができました。

 というわけで、若干複雑な心境ではありますが、ああいう「ブル5」になるであろうということは覚悟していましたから、不満は残りませんでした。それ以上に、ベルリン・フィルの凄さを体感できたことが大満足でした。

 しかし、今回のコンサート前に、シャルク版の新譜で、高速ブルックナーへの免疫を作っておいたのもよかったかもしれない(笑)。


======================= 1998-10-20 (Tue) 23:37:53 ====================


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