ボローニャ歌劇場日本公演「フェドーラ」


日 時:平成10年10月7日(水)午後7時〜
場 所:NHKホール
演 目:ジョルダーノ/フェドーラ(全3幕)
出 演:フェドーラ  …ミレッラ・フレーニ
    オルガ    …アデリーナ・スカラベッリ
    ロリス    …ホセ・カレーラス
    ジョヴァンニ・デ・シリエ   …ブルーノ・ポーラ
    ディミトーリ/小さなサヴォイ人…チンツィア・デ・モーラ
    デジレ    …オルフェーオ・ザネッティ
    ルーヴェル  …ルカ・カザリン
    チリッロ   …シモーネ・アルベルギーニ
    ボロフ    …フランコ・ボスコロ
    グレック   …ジャンルーカ・ヴァレンティ
    ロレーク   …マッシミリアーノ・ガリアルド
    ニコーラ   …マルコ・ダニエーリ
    セルジオ   …マウロ・ガブリエーリ
    ミケーレ   …フランコ・モントルシ
    ラツィンスキー…ステファノ・コンティチェッロ
    合唱…ボローニャ歌劇場合唱団
    合唱指揮…ピエーロ・モンティ
    管弦楽…ボローニャ歌劇場管弦楽団
    指揮…ステファーノ・ランザーニ
    演出…ベッペ・デ・トマージ


 カレーラスのロリスも素晴らしかった。これで「三人」を舞台で聴くことができた。でも、主役はフレーニ。3幕に出ずっぱりで、しかも各幕ごとに感情の表現が違うという重い役を存分に演じて堪能させてくれました。

 第1幕は、婚約者が撃たれて運ばれてきて、やがて死亡するという場面。夜の中で悲しみ、憎しみをぶつけ、バサッと切り落とすように終わっていく。ほの暗い中で芝居が展開されていく。

 第2幕は、一転して夜会の場面。華やかなステージが展開されます。ここで歌われるのが、ロリス(ホセ・カレーラス)の「愛さずにいられぬこの想い」。短いアリアですが、もう、前奏が聞えたところで全身の血が沸き立ち、カレーラスの歌が始まったところで沸き立った血が逆流するような興奮を覚えました。

 夜会の場面なので、男性は燕尾服姿。ですからカレーラスの舞台姿といっても、リサイタルと変わりありません(笑)。しかし、切々と歌う姿は、実に魅力的でした。また夜会の場面でピアニストのラツィンスキーが出てくる場面では、ショパンの軍隊ポロネーズを引用したような音楽が流れて、ちょいと笑いを誘うようなところも。

 第2幕の後半。夜会が終わってフェドーラとロリスがからむ場面。実に美しい夜のしじまの演出でした。

 第3幕は、一転して明るい舞台。スイスの山荘の場面。フェドーラとロリスが幸福な暮らしを送っている場所。しかしその幸福も、ロリスの兄と母の死、そしてその原因がフェドーラの密告によるものだったことから打ち砕かれます。激しい怒りに震えるロリスとおののくフェドーラ。そして真実が明らかになったとき、フェドーラは死を選んだ...。舞台そのものの動きはなく、二人の歌と演技のぶつかり合いだけが作り上げていく素晴らしい歌劇でした。

 しかし、この素晴らしい二人を支えた続けたのは、瑞々しいまでの演奏を終始繰り広げていたオーケストラでした。しかも、まさにオペラハウスのオーケストラ。決して歌の邪魔をせず、流麗なる音楽をつむぎ出していくその力には感心するばかりでした。

 日本でも、せっかく新国立劇場ができたのですから、専属のオケを作れればいいのですが...。現在の公演ペースでは専属オケを維持できる収入はあげられないのでしょうね。しかし、いずれは、東京の各オケが入れ替わり立ち代りピットに入るのではなく、専属の管弦楽団が、せめて私が生きているうちにできることを願うばかりです。
======================= 1999-01-04 (Mon) 20:27:43 ====================


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