ボローニャ歌劇場日本公演(1)


日 時:平成10年9月30日(水)午後7時〜
場 所:オーチャードホール
演 目:プッチーニ/ジャンニ・スキッキ(全1幕)
    マスカーニ/カヴァレリア・ルスティカーナ(全1幕)
出 演:ジャンニ・スキッキ
     ファン・ポンス(ジャンニ・スキッキ)   アリダ・フェッラリーニ(ラウレッタ)    チンツィア・デ・モーラ(ツィータ)
     ルカ・カノーニチ(リヌッチオ)ほか    マルコ・ガンディーニ(演出)
    カヴァレリア・ルスティカーナ
     アグネス・バルツァ(サントゥッツァ)   サラ・ム・ブンガ(ローラ)     アントネッラ・トレヴィサン(ルチーア)
     ホセ・クーラ(トゥリッドゥ)         カルロ・ヴエルフィ(アルフィオ) マルコ・ガンディーニ(演出)
   (両者とも)
    ボローニャ歌劇場合唱団(合唱)    ピエーロ・モンティ(合唱指揮)    ボローニャ歌劇場管弦楽団(管弦楽)
    マッシモ・デ・ベルナール(指揮)


 本格的な舞台付きということでは、藤原の「カルメン」以来のオペラです。

 東京の初日ということで、かなりドレスアップした人達も来ていて、なかなか華やかでした。ただ、オーチャードも開演前や幕間の散策を楽しむには、ロビー等がちょっと狭いかなという気がします。

 今回は2階の袖の席でしたが、思いのほか舞台が良く見えて、なかなか良い席でした。  開演よりもかなり早い時間帯に、なんと客席にホセ・カレーラスが。あっという間に、オバハンの餌食になっておりました(^_^;)。開演直前に座席に案内するようにすれば、多少拍手が沸いたりはするでしょうが、あんなサイン攻めにあわなくて済むのに...。

 ジャンニ・スキッキは「私のお父さん」しか知らなかったので、全曲を聴くのは今回が初めて。別にそうだからというわけではありませんが、舞台の幕がうまく上がらなかったり、装置がうまく作動しなかったりとかで、前奏曲を3回も聴く事が出来ました(笑)。後半の始まる前に「完全な形で上演できなかったことへのお詫び」が入りましたが、イタリア語だったので、何がどうまずかったのか、まったく判りませんでした(^_^;)。

 筋は、死んだブオーゾの遺産を何とか修道院にいかないように画策した親族が、ジャンニ・スキッキの策で遺言状をでっち上げたものの、肝心の屋敷等はすべてジャンニ・スキッキに取られてしまうという喜劇ですが、舞台に大きな寝台(高くもある)を据え、そこの周りでドタバタをやるという、シンプルですが上手い演出でした。

 ファン・ポンスは、METでは道化師の「トニオ」を聴きましたが、ジャンニ・スキッキでも貫禄の演技と歌でした。ラウレッタ役のフェッラリーニというのは初めて聴いた歌手でしたが、あまり印象には残りませんでした。「私のお父さん」はなかなか良かったけど。

 むしろ、良かったのはオケ。マッシモ・デ・ベルナールの指揮は、まさにオペラ指揮者のそれで、腕をグルグルと動かしながら音楽を流していくさまは、クライバーをほうふつとさせるものでした。節回しも、そこまでやるかっていうくらい、コテコテのイタリア節を聴かせてくれました。

 後半はおなじみの「カヴァレリア」。しかもバルツァとクーラという「強い」歌手同士のぶつかり合いが楽しみです。  舞台装置は、舞台に向かって右側が教会。左側が3階建てくらいの集合住宅といった様子。前奏曲の途中で、トゥリッドゥ(クーラ)の歌うシチリアーノがきこえます。かなり力強い歌声。


 後半はおなじみの「カヴァレリア」。しかもバルツァとクーラという「強い」
歌手同士のぶつかり合いが楽しみです。

 舞台装置は、舞台に向かって右側が教会。左側が3階建てくらいの集合住宅
といった様子。前奏曲の途中で、トゥリッドゥ(クーラ)の歌うシチリアーノ
がきこえます。かなり力強い歌声。

 そして、まさに「歌うような」旋律にのって、合唱が入ってくる。この後はもう、美味しい見せ場の連続。全てを書いていては、オペラ全部について語ることになるのですが(笑)。

サントゥッツァと合唱「主はよみがえられた」
 サントゥッツァが、悲しみをおしかくすようにして歌う賛美歌の場面。
 
サントゥッツァの「ママも知るとおり」。
 バルツァのリサイタルでも歌われた曲ですが、オーボエの前奏から、慟哭のような弦の旋律が鳴ると、ぞくぞくします。バルツァの歌も絶品。リサイタルのときも、あたかもオペラから切り出してきたような表情でしたが、本物の舞台だと、さらに迫力が増します。

トゥリッドゥとサントゥッツァの二重唱
 圧巻でした。ただ激しく火花を散らすという次元を超えて、ローラに心を奪われたトゥリッドゥと、何とか引き戻そうとするサントゥッツァのドロドロとした絡みまでをも表現しており、見事と言うほかありません。
 クーラの声は「厚い」声で、バルツァと充分渡り合えるものでした。一本調子であるという批判もあるようですが、良いテノールというのは、存在そのものが神様の恵みですので、神様に注文をつけるようなことはしますまい。あとは長く活躍してほしいです。

間奏曲
 オケつきの歌もののリサイタル等でよくとりあげられる有名な曲ですが、随所にルバートやアッチェルランドを散りばめ、やりたい放題の演奏。ブラーボが飛んでました。

トゥリッドゥの「母さん、この酒は強いね」
 アルフィオとの決闘を前に、死を覚悟したトゥリッドウが歌う別れの歌ですが、最初の「マンマ!」は、酒場(店)の前の石のベンチに座り、うつむきながら歌うという設定。クーラは、仰向けになって「清きアイーダ」を歌ったり、この手の仕掛けがすきなのかな。

幕切れ
 ここも最後はオケが伸ばしまくり(笑)。大歓声の中で幕となりました。

 てなわけで、2曲とも実に良い出来で、大満足でした。舞台装置や演出のことはよく判らないのですが、照明をうまく使って陰影を出したり、なかなかよかったです。

 前半の「ジャンニ・スキッキ」でトラブルがあったこともあり、延々と続いたカーテンコールが済んで我々がホールをあとにしたのは午後10時30分ちかくでしたが、30分もあれば悠々帰宅できるのは、地の利(笑)。ウィーンで過ごした1週間を思い出させてくれるような一夜でありました。

======================= with mobile gear(MC-MK12) ====================


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