新星日本交響楽団第199回定期演奏会


日 時:平成10年5月18日(月)午後7時〜
場 所:サントリーホール
出 演:新星日本交響楽団(管弦楽)
    オトマール・マーガ(指揮)
曲 目:ワーグナー/ジークフリート牧歌
    ブルックナー/交響曲第5番変ロ長調


 一昨年の「ブル7」の評判がよかったので、足を運んだ演奏会ですが、いや〜すばらしかった。

 最初の「ジークフリート牧歌」は、ほんとにゆーったりとした、気持ちのよい、まどろみを誘うような演奏。弦の音もふくよかで、とても美しかったです。最後は、静寂の中に音が消えていったようで...。「ルードヴィヒ」のなかで使われた音楽ですが、あのときの映像を思い出しました。

 マーガの指揮は、すごく表情豊かで、まるでオーケストラに息を吹き込むようなバトン・テクニックでした。

 メインのブル5。全体を通じて、速い部分はかなり速く演奏していました。それでいて、決してせかせかとした感じではないのです。弦がだんだんアッチェルランドしていった挙げ句に、管とトゥッティになるという手法が多く使われているのですが、そういうところは、トゥッティのところでテンポをしっかり落としながら、たっぷりと鳴らすという演奏で、すごく聴きごたえがありました。

 第2楽章の頭のピチカートの3連音符とオーボエの4拍子をどう振るかなとおもったら、かなり速いテンポで、3連音符を一拍振り(つまり一小節を2拍)で振って、そこにオーボエがのっかるという感じでした。その後に続く弦楽合奏も、心に切々と訴えかけるような、すばらしい響きでした。

 圧巻だったのは第4楽章。ここは、対位法の嵐で、いろいろなパートが絡むのですが、マーガの指揮は、その絡みをすごく立体的に聴かせてくれ、さらには見せてもくれました。指揮を見ていると、「あ〜ここからヴィオラね」とか、「あ〜。ここで管が追いかけているのか。」というのがすごくよく分かるのです。それでいて、決して無味乾燥な分析的演奏ではありません。ちょうど、ポリフォニーを集中して聴いているような感じ。

 金管に対する指示も、固い音がほしいところでは鋭く、たっぷりとしたコラールを求めるところでは、手を横にスライドさせ、息を流すような指揮ぶりでした。

 最後のコラールに入る直前はかなりのスピードで弦が刻んでいき、突入するぎりぎりのところでスピードを落としながら、金管が「ズァーン・ズァーン」と吹き上げるという感じです。よく、たとえていうのですが、時速200キロくらいでコーナーに進入してヒール・アンド・トゥを駆使して再び立ち上がっていく(途中でヴァーンと、エンジンの回転があがる)というところでしょうか。

 1月の若杉/N響のチクルスでのブル5が、今一つ肌にあわなかったのですが、今日のマーガのブル5は、非常に楽しめました。ほんとは、もうちょっとテンポを全体的におそめにしてくれると、もっとうれしいのですが、それは、もはや「身勝手」の領域の問題かもしれません(笑)。

 最後のコラールのあたりでは、舞台から視線を外して天井を眺めながら聴いていたのですが、壮大とまではいかなくても、見事な大伽藍を構築しているのが、見えたような気がします。

 来年あたりは、こんどは8番をお願いしたいところです(^^)/ぜひ。

 それにしても、これだけの名演なのに、お客さんの入りが今一つなのは勿体無かった。分身の術が使えるのならば、10人くらいになって聴きたかったくらい、すばらしい演奏会でした。
 でも、演奏聴いた後で合体したら、感動がオーバーフローして気絶するかも(笑)。
======================= 1998-05-19 (Tue) 00:25:59 ====================


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