朝比奈/新日本フィル「第9」

すみだトリフォニーホール開館記念公演


日 時:平成9年12月7日(日)午後2時〜
場 所:すみだトリフォニーホール
出 演:新日本フィルハーモニー交響楽団
     澤畑恵美(ソプラノ) 伊原直子 (アルト)
     岩本明志(テノール) 多田羅迪夫(バリトン)
     晋友会合唱団・すみだトリフォニーホール・オープニング記念合唱団(合唱)
     関屋晋 (合唱指揮)
     朝比奈隆(指揮)
曲 目:ベートーヴェン/交響曲第9番ニ短調 作品125「合唱つき」


 錦糸町駅で下車し、5分ほど線路沿いに両国方面に戻ったところにホールがありました。
 ホールは、ローズウッドのような色調の木をふんだんに使った、なかなか立派なものでした。ステージの後ろの座席(P席)はなく、両サイドには狭いバルコニーがしつらえられていました。

 このパルコニー、二階くらいの高さから、ステージに近づくに連れて低くなっていきます。それと、ステージへの出入り口付近の作りが、床と傾斜を持たせてある(もちろん出入り口そのものは90度ですが)ためか、座席に深くすわっていると、客席からステージに向かって上りの傾斜になっているような錯覚に陥ります。今日も、一階の10列目くらいに座ったのですが、まるでステージを自然に見上げているという感じで、とても気持ちよかったです。

 後ろの席に座った3人連れくらいの人の話を聞いていると、中の一人は「今年は朝比奈さんの第9を6回聴く。」とか。大フィル東京定期、大フィルのベートーヴェン・チクルス、新日本フィル定期、今日、大フィル年末2回...。凄いですね〜(@_@)。

 演奏ですが、実に堂々としていて、聴き応えがありました。6月の大フィルのときは、初めて朝比奈先生の第九を聴いたこともあり、十分に消化できないところもあったのですが(ティンパニーがどうしたとかといったことに目を奪われすぎていたということもあって。)、今回は、そういうことはあんまり考えずに、ただ、ひたすら音に身を委ねるという聴き方に徹しました。

 第3楽章はあまり粘っこくなく、無意味にテンポを落としたりすることなしに、さらりと進んでいきました。アタッカで第4楽章。例の歓喜の歌の主題が出てくるところも、わざとそっけなく演奏させているのかと思うくらい、テンポを緩めずに進んでいきました。

 トルコ行進曲のあとの「freude schoner・・・」(8分の6で書かれているところ)の合唱は、安手の軍歌にならないよう、朗々たるコラールを歌わせるような指揮でした。結構合唱に向かって振っていたので、いいなぁ...と思いました。

 終演後、割れんばかりの拍手の中、袖から大きな花束を持って登場した朝比奈先生、拍手を遮るようにして「しー」というしぐさ。静まり返った中、「コントラファゴット・・・あの、丸太んぼうみたいな(笑)・・・。今日で退団されます。」

 コントラファゴットの奏者の方(残念ながら名前を存じ上げません)が退団されるということで、先生自ら花束を渡されたのでした。それにしても、朝比奈先生の肉声を聴けるとは...。
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