朝比奈隆&新日本フィル ベートーヴェン・チクルス 2


日 時:平成9年11月12日(木)午後7時〜
場 所:サントリーホール
出 演:新日本フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)
    朝比奈隆(指揮)
曲 目:ベートーヴェン/交響曲第2番 ニ長調  作品36
       〃   /交響曲第5番 ハ短調  作品67「運命」


 ホールの真上に、ぽっかりとまあるい月。それも、おぼろ月。とても11月中旬とは思えない暖かさである。眠くなるのを防ぐために事務所近くで、軽くもりそばを食べるだけにする。

 今日は前から4列目でヴィオラの2席の前あたり。ベートーヴェンの2番・5番を生で聴いたのは、昭和52年のベーム/ウィーン・フィル以来であるから、もう20年以上前の事になる。

 まず交響曲第2番。

 この曲は、長い序奏があるが、実に堂々とした序奏だった。例のごとく、弦のパートのうち、内声にあたる第二バイオリンとヴィオラの刻みの部分を、非常に丁寧に弾いていた。指揮者がなんぼ棒を振っても、こういう刻みの部分がいいかげんだと、段々曲が走り出したりするようになる。音が均等に割り振られている以上、そのとおりに弾かなければならないということを、奏者がよく心得ていた。ただ、序奏のあとのアレグロの部分は、やや重く、爽快というのとはちょっと違った。

 第二楽章の冒頭は、まるで弦楽四重奏を聴いているような美しいハーモニーを奏でていた。

 第四楽章は、最後のコーダに入る前のピアニッシモの部分が実に美しかった。それだけに、パーンとコーダのところでいきなり大きくなるのが引き立っていた。最後も堂々たる終結。こんなに重厚な2番というのは初めて。とくに第4楽章なんか、結構雑駁な演奏のCDを聴いたことがある。

 休憩後は、運命。

 ホールが静まり返り、先生の手が、最初小さく、そして一気に振り下ろされる。一気に運命の主題。

 第1楽章は、かなりゆっくりとしたスピード。もうすこし速いほうが、私の好みではある。

 途中、第1バイオリンのコンサートマスターの音色だけが浮き出て聞こえるような気がして気になったところが少しあった(どっちが悪いのかは判らないけれど)。

 第3楽章から第4楽章への移行部分で、今までためていたエネルギーを一気に放出。第4楽章からはフル・パワーで、怒涛のようなフィナーレ。ここも、管のセクションの、ファンファーレ(ドーミーソーファミレドレドーー)を支えるヴィオラセクションが、実に丁寧な演奏。ともかく刻むところは絶対にいいかげんなことはしないというのが終始一貫している。

 第4楽章の繰り返し部分で頭に戻るところなんか、たっぷりとドミソの和音を聴かせてくれていた。 最後の和音の駄目押しの部分は、一つずつの音符を、実にきちんと弾いている。「チャン! チャンチャンチャン!」ではなく「ザン!ザンザンザン!」とたっぷりと音が響く。 これだけ圧倒的な第4楽章で締めくくられれば、気持ちよく帰途につけるのも当然であろう。

 終演後は、丹念に刻みの部分を弾いていたヴィオラセクションに拍手を送った(全員の顔を見て、そっちのほうを向いて拍手をした)が、たぶんわからなかっただろうな〜(笑)。

======================= 1997-11-13 (Thu) 00:33:08 ====================


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