パヴァロッティ ナゴヤドーム・オープニング・ガラ


日  時:平成9年3月22日(土)午後4時〜
場  所:ナゴヤドーム
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
指  揮:マルコ・アルミリャート
合  唱:東京オペラシンガーズ
独  唱:ルチアーノ・パヴァロッティ(Ten.)
     シンシア・ローレンス(Sop.)
曲  目:プッチーニ/「妖精ヴィッリ」より前奏曲
     同   /「蝶々夫人」より「さよなら愛の家」(パ)
                  「ある晴れた日に」(ロ)
            「トゥーランドット」より「泣くなリュー」(パ)
                      「聞いて下さい、王子様」(ロ)
    ヴェルディ/「ナブッコ」より「祭りの晴れ着がもみくちゃに」
                     「行け、我が思いよ、金色の翼に乗って」
                                 (合唱)
    プッチーニ/「ボエーム」より「冷たい手を」(パ)
                      「私の名はミミ」(ロ)
                      「おお、うるわしい乙女よ」(パ・ロ)
−−−−−−−−−−−−−−−−−休憩−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    マスカーニ/「カヴァレリア・ルスティカーナ」より「母さん、この
                  葡萄酒は強いね」(パ)
    ビゼー  /「カルメン」より「何を恐れる事がありましょう」(ロ)
    ヴェルディ/「アイ−ダ」より「凱旋行進曲」(合唱)
    マスカーニ/「わが友フリッツ」から「さくらんぼの二重唱」(パ・ロ)
    レハール /「メリー・ウィドウ」から「ヴィリアの歌」(ロ)
    ガーシュイン/「ポーギーとベス」から「うちの人は逝ってしまった」(ロ)
    レオンカヴァルロ/「朝の歌」(パ)
    シベッラ /「ラ・ジロメッタ」(パ)
    デ・クルティス/「忘れな草」(パ)
−−−−−−−−−−−−−−−(アンコール)−−−−−−−−−−−−−−−−
    ララ   /「グラナダ」(パ)
    プッチーニ/「トスカ」から「星は光りぬ」(パ)
    ディ・カプア/「オー・ソレ・ミオ」(パ)
    ヴェルディ/「椿姫」から「乾杯の歌」(パ+ロ+合唱)


 プログラムを見ていただければわかると思いますが、実に「まっとう」な選曲です。そのためか、「ドームみたさ」できた「観客」はおいてけぼりになったようです(笑)。 ドームの音響は思っていたよりは良かったです。私はちょうど「三塁側内野席でグラウンドから25列目」の席でした。ステージはセンターの位置に作ってあって、かなりエコーはありましたが、音自体は国立競技場よりもはるかによかった。PAも屋内ということで、あまりボリュームを上げすぎていなかったようで。

 ステージは、三大テノールのときのを使い回しです。ただ、ここは屋根があるので、ステージの上の照明等はドームの屋根からつるす形にしていました。したがって、ステージには柱はなく、非常に見やすかったし、ステージの左右にスクリーンを設置してあったので、よくみえました。 パヴァロッティはなかなか好調でした。特に「ボエーム」の「冷たい手を」から「私の名はミミ」を挟んで「おお、うるわしい乙女よ」に至る3曲は、まさにオペラの名場面を切り取って見せてくれているようでしたし、後半の「友人フリッツ」からの「さくらんぼの二重唱」もしっとりと聴かせてくれました。

 ソプラノのシンシア・ローレンスは、パヴァロッティが主催するコンクールで見出された歌手だそうですが、なかなかの逸材だと思いました。ヴィリアの歌やポーギーとベスなどはよかったです。最後は、「朝の歌」−「ジロメッタ」−「忘れな草」と、ややポピュラーな曲で閉め、いちおうおしまい。

 アンコールの一曲目は「グラナダ」。パヴァロッティのグラナダというのは初めて聴きましたが、正直なところ、これはやはりカレーラスの方があっている。2曲目は、シンと静まり返ったドームにクラリネットのソロがきこえたところで拍手喝采。「星は光りぬ」。これは5月にメトで肉声を聴けるので、これもまた楽しみ。3曲目の前に、簡単なスピーチ。「この素晴らしい建物が完成した記念に、私の国の歌、オー・ソレ・ミオを贈ります。」。やっぱりこれ。パヴァロッティはこの曲が似合う。そして最後には「乾杯の歌」。今回は楽譜は持って行かなかったが、幸いに合唱が入っていたので、客席が歌う場面はなかった(笑)。

 ということで、時計を見ると終演予定の午後6時30分ぴったり。ということで、お開きになりました。

 え? なんとなく醒めてるなって? あの「三大テナーへの道」を書いたときの熱気はどこに行ったって?そうなんだよね〜。私も、演奏会が始まって、なんとなくカーっと来るものがなくて、こんなはずはないと思いつつも、あれよあれよという間に、終わってしまったのだ。 いや。歌は凄く良かったよ。落成記念の御祝儀演奏みたいのとは全然違って、とても真摯に歌ってたもの。

 要するにね〜。客席が醒めてるんだわ。アリーナの方はそれなりに乗ってたのかも知れないけど、スタンド席はしら〜っとして聴いている。もっとうわーっとなってもいいのになぁと思ってたんだけど。国立競技場のときなんか、周囲一帯が、躁状態で凄かったからなぁ...。この日だって、もしかしたら、ほんとは「誰も寝てはならぬ」まで用意してたのかもしれないのに。乾杯の歌終わったら、さ〜っと引いちゃったし。

 今回の演奏会を一言で言えば「パヴァロッティの無駄遣い」ですね。あんなにいい演奏をしてくれるのに、こんな環境しか用意できなかったのがもったいない。そらま〜、「ナゴヤドーム落成記念」というのはわかるけど、雰囲気は「ドームが主役」で「パヴァロッティは添え物」みたいな感じなんだもん。

 あとから伝え聞いたところによると、地元の業界団体とかいろいろ金持ちが集まっているところにチケットを集中的に売りさばいたようで、本当に聴きたい人のところにはチケットがまわらなかったとか。まぁ、「大衆化」を欲してこういうアリーナでのコンサートをやるのがパヴァロッティの意図するところだから、その意味ではよかったのかもしれないが、あとが続くかなぁ(笑)。

 ちなみに、演奏会の翌日の中日新聞は、一面で当日の演奏会の模様を伝えていました。さすが主催者の新聞だけあって、誇張の嵐(笑)。というわけで、ちと複雑な気持ちで帰ってきました。やっぱり、あれぐらいの規模のコンサートとなると、聴衆のノリも一つのファクターですね。救いは「音楽は良かったこと」。これがすべてです。

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