新日本フィルハーモニー交響楽団第九特別演奏会


日 時:平成8年12月29日(日)午後7時〜
場 所:サントリーホール
出 演:独 唱:佐々木典子(ソプラノ)、秋葉京子 (メゾソプラノ)
         福井 敬 (テノール)、多田羅迪夫(バリトン)
     合 唱:晋友会合唱団(合唱指揮 関屋 晋)
     管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
    指 揮:ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ
曲 目:ベートーヴェン/「献堂式」序曲(作品124)
          (休憩)
    ベートーヴェン/交響曲第9番(作品125)「合唱つき」


 今年最後の演奏会。御用納めの済んだ日曜日の夕方ということもあって、街は閑散としていた。アークヒルズの「レナウン・ミラノ」でパスタを食べて、普段だと丸善で少し時間潰しをするのだが、すでに休業期間ということでサントリーホールへ。客層は...これといって特徴はなかった。入りは9割7分くらいか。

 「献堂式」序曲ははじめて聴いた曲だった。第9の初演のときにもこの曲が露払いで演奏されたとか。まぁ、オーケストラの鳴り具合を味見するにはいい曲かもしれない。

 10分ほど休憩を挟み、メインの第9。オケと合唱団が入場してくる。合唱団の男声部の人とティンパニー奏者が何やら話をしていた。

 ロストロの棒が動く。弦が細かい音符を刻み始める。心なしか、一つ一つの音符が非常にはっきり演奏されているようにおもえる。 ロストロの指揮に接するのは初めてだが、非常に熱っぽい音楽を指向するタイプと見た。昨年のボッセが、あまりに抑制を効かせすぎて、聴くほうとしては、たしかに奇麗ではあったが発散できなかった演奏になってしまったのとは好対照。その前の年は佐渡さんが、これは大スペクタクルを作り出していた。

 第2楽章も非常に力の入ったスケルツォ。そして途中の弦の絡み合いのところはきわめて美しい。

 第2楽章の終わったところで、独唱者が登場。いつも思うのだが、ここで独唱者が出てきて拍手が鳴ると、音楽が途切れてしまうようにおもえる。最初から待機しているのはつらいのかもしれないが...。

 第3楽章の冒頭、木管の絡み合いから弦楽の響きに入っていくところを聴くとなぜか背中がぞくっとして、神秘的な気持ちになる。途中のホルンソロもうまく通過し、ファンファーレのあとの、まるでオルガンのような響きをするところで「年の終わり」を感じた。

 第3楽章から第4楽章の移行は、アタッカで行くのか一旦切るのかはっきりしなかった。客席から雑音がきこえたため、棒を振り下ろすタイミングを失したのかもしれないが...。

 第4楽章の冒頭は、さすがロストロ。名チェリストの指揮だなという音楽作り。コントラバスとチェロのレシタティーポがすばらしい。そして無音の中から微かにきこえてくる「ミミファソソファミレドドレミミーレレー」というメロディー。だんだんに高まっていく。

 声のほうは、テノール独唱はちょっと弱かった。合唱は非常に力強いが、声としては男声がずいぶん強くきこえた。並び方も関係していたのかもしれない。

 全体として、決して奇をてらわず、ホールをたっぷりと鳴らしてくれていた。やっぱり「第九」はこうでなくっちゃ。
======================= 1996-12-31 (Tue) 20:20:17 ====================


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