日 時:平成8年11月14日(木)午後7時〜
場 所:サントリーホール
出 演:管弦楽:東京交響楽団
独 唱:ドーン・アプショウ(ソプラノ)
指 揮:エーリヒ・ビンダー
曲 目:サティ(ドビュッシー編)/3つのジムノペディより
バーバー /ノックスヴィル、1915年夏(作品24)
(休憩)
マーラー /交響曲第4番ト長調「大いなる喜びへの賛歌」
CLAにミニSIGができるほどの歌手ならば聴いてみたいと思い、当日券を買って聴きました。昼間サントリーホールに電話をしたら全くつながらず、夕方になってやっとつながって、当日券があることを確認しましたが、一体、何の売り出しだったのだろうか...。 それと、もう一つはビンダーの指揮。元ウィーン・フィルのコンサートマスターだった人が、どういう指揮をするのか。前回のベートーヴェンは好評だったそうなので、楽しみでした。
最初のジムノペディは、ともかく弦のユニゾンが奇麗でした。ビンダーの指揮は、弦楽器奏者らしいそれで、本当に弦から良い音を引き出すなぁという印象であった(オケの練習でも自分でヴァイオリンを引きながら指示するとか。)
バーバーの「ノックスヴィル、1915年夏」は、オーケストラ伴奏付きの歌曲。詩の内容は、昔語りのようなもので、曲もちょいと叙情的なところあり、激しいところありという感じ。
アプショウの声は、いわゆる「造った声」というのではなく、非常にナチュラルな澄んだ声であった。今回はサントリーホールのP席という、歌ものにはあまりよろしくない場所に座ったが、それでも美しさは充分感じられた。
休憩を挟んで、マーラーの4番。
いい忘れたが、今日のオーケストラの配置は、舞台前列に第一Vn、第二Vnを左右対称に並べ、普段第二Vnがいるところにヴィオラ。数日前のN響アワーで放映された、スラトキンのマーラー4番と同じ配列であった。
第1楽章は、かなり速い。ビンダーの指揮は、見ていて楽しい。クライバーとまでは行かないけれど、なかなか流麗なバトンテクニックを見せてくれた。オーケストラをかなり自由自在にドライブするという感じ。とくに弦がみずみずしく、美しい。この人がマーラーの9番を振ったら、ケント・ナガノのときのような、薄っぺらいマーラーにはならないだろうなと思った。
第2楽章もかなり速めのテンポで進んだ。第3楽章は、一転してゆったりと、そしてたっぷりと歌わせるような指揮。とくに楽章冒頭の入りは、やや上を向き、両手をいっぱいに、しかしとても柔らかく大きく円を描くように入っていった。途中三拍子になるところがあって、そこは、ちょっとウィンナ・ワルツのようなリズムが入ったりした。
終末少し前のフォルテのところは目一杯鳴らしていたが、奇麗な音だった。 そして第3楽章が消え入るように終わり、ほんのわずかポーズをおいて、すぐさま第4楽章へ。このつなぎがなんとも美しい!
アプショウの歌は、実に表情豊か。マーラーの4番は、ブーレーズ/BBC響(独唱:ヤン・デ・ガエタニ)、フォスター/N響(独唱:バーバラ・ヘンドリックス)で聴いたことがあるが、これだけ闊達に、オペラのアリアでも歌うかのように歌ったのを聴いたのは初めてであった。
最後は、コントラバスとハープの音が吸い込まれるように消えていき、静寂がすこしあってから、拍手。まさに「大いなる喜びへの賛歌」の名に恥じないすばらしい演奏だった。
======================= 1996-11-15 (Fri) 01:43:57 ====================