NHK交響楽団定期演奏会(96年9月Cプロ2日目)


日 時:平成8年9月7日(土)午後2時15分〜
場 所:NHKホール
出 演:管弦楽:NHK交響楽団
     ピアノ:リチャード・グード(曲目1)
     指 揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
曲 目:1 ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第1番 ハ長調 作品15
    2    同    /交響曲第3番 変ホ長調 作品55 「英雄」


 今年はN響創立70周年ということで、9月、10月はベートーヴェン・チクルス。第9を除く交響曲全曲と、第2番を除くピアノ協奏曲全曲が演奏される。指揮者は9月がブロムシュテットで、10月がシュタイン。

 例のごとく、当日券売り場にいくと、年配の女性から声をかけられた。話を伺ってみると、S券を2枚持っているが、旦那さんが来られなくなってチケットが1枚あまっているとのこと。「D券の値段で結構ですから」というお言葉に甘えて、譲っていただくことにした。

 ホールに入って、まず座席にいってみると、ものすごく良い席で驚いた。2階レフトの最前列である。歌舞伎座でいえば桟敷席に近いところである。NHKホールでこんなに良い席で聴くのは、6〜7年前だっただろうか、スウィトナーの指揮で、ブルックナーの交響曲第8番を聴いて以来である。

 2階のエレベータ近くの壁に、N響70年の歩みという展示がなされている。みると、懐かしい写真が並んでいる。昭和52年のローゼンストック指揮の演奏会。確か高校生の時だった。定期会員になっている友人から「この日は俺、行けないから、あげるよ。」といわれて貰ったチケットで行った演奏会だった。あれから20年近くたって、「ローゼンストックなんて、もっと昔の指揮者だったんじゃないか。聴いたと思っているのは自分の勘違いじゃないだろうか。」と思うことがあった。しかし勘違いではなかった。

 その他には平成4年の若杉さん指揮によるマーラーの8番。カミサンと結婚する二週間前の演奏会であった。一階奧のラウンジで軽く食事をして、座席に戻る。ほどなく先ほどチケットを譲ってくださった女性が席にやってきた。「お気に召していただけたでしょうか。」「いやいや。こんなすばらしい席で聴くのは久しぶりですよ。本当にありがとうございます。」開演まであれこれと雑談をした。 開演の合図。一階席をみると、ほぼ満席である。団員が三々五々ステージに出てくる。

 最初の曲目は、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第一番。大昔に「ハ長調だったら自分でも弾けるのではないか。」などととんでもないことを考えて、楽譜を買ってきたことのある曲である。結果は・・・弾けるようになった。出だしの五小節だけは(笑)。チューニングが終わり、しばしの静けさの後、ピアニストのグートと指揮のブロムシュテットが登場。拍手がやみ、指揮棒が動く。何度も聴いたことのあるメロディーが流れ出す。そしてピアノの響き。粒立ちのはっきりした溌剌とした音色である。第一楽章の最後のカデンツァは思いっきり名人芸を披露するという感じであった。第二楽章はゆったりと流れる美しい調べ。そして第三楽章は再び快活な響き。非常に明るい音色のピアノで、実によかった。

 後半は交響曲第三番「英雄」。先週だったかの「N響アワー」でオーボエの茂木大輔さんが「今からソロをどう吹こうか考えている」といっていたのを聞いて、こりゃ聴きに行かねばと思ったのが、今回の演奏会にいくことにした一つの理由でもある。

 後半の開演の合図。再び団員が舞台にそろい、チューニングが終わる。

 そうそう。この日のステージの弦楽器の配置は、いつもの定期とは全く違うスタイル。サントリーホールの若杉さんのブルックナーのときと似ている。

 ブロムシュテットが登場。答礼後、勢いよく指揮棒を振り下ろす。「ジャンッ! ジャンッ!」というおなじみの出だしで英雄交響曲が始まる。ほとばしるような演奏である。やはりシーズンの最初のプログラムだと気合いの入り方も違うのだろうかと思わせるようないい演奏である。ホルン(松崎さん)、フルート(小出さん)のソロも非常にさえている。

 第一楽章が終わって、ほんの一瞬空気が緩まなかったような気がした。最後の音が消えてすぐ咳ばらいをするのをはばかられるくらい圧倒されていたのか。ブロムシュテットは指揮棒を構えずに待っている。客席がいつの間にかシーンと水を打ったように静かになっている。その中で、ゆっくりと指揮棒が動く。第二楽章が始まる。引きずるような弦楽器の旋律の後、茂木さんのオーボエの音色が響く。実に美しい。

 第三楽章は、途中のホルンの重奏部分。一瞬「あぶない」と思うところもあったが、全体的にはきれいな響きだった。

 第四楽章は、思いっきり弾きまくるという感じ。ぐいぐいと前へ前へとすすむすばらしい演奏だった。

 最後の音が消えると、ものすごい拍手。土曜の定期は年輩の夫婦連れが多いためか、ブラヴォーの嵐にはならないが、拍手の厚さが演奏の出来を示していたように思う。 九月はあと二プログラムでベートーヴェンの二番・八番・五番。十月はシュタインの指揮で四番・六番・一番とある。う〜ん。これは「皆勤」になる可能性も(^_^;)。
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