ケント・ナガノ/ハレ管弦楽団


日 時:平成8年6月9日(日) 午後6時〜
場 所:サントリーホール
出 演:ケント・ナガノ(指揮) ハレ管弦楽団(管弦楽)
曲 目:1 ハイドン /交響曲第1番 ニ長調
    2 マーラー /交響曲第9番 ニ長調


 書かねば書かねばと思っていたが、仕事に「追われて」ではなく、仕事の方が「面白くて」、ついつい延び延びになってしまっていた。今日も、ビールの勢いでやっとエディタを立ち上げた(笑)。 チケットは、たまたま事務所の近くの金券ショップに新幹線の券を買いに行ったら、委託販売で売りに出ていたものを2700円で入手できた。これ自体ラッキーであった。

 当日は、表向きは売り切れ。ただ、招待客が来なければその分を販売するということで、結局、並んでいた人はみな入れた模様。 開演前に、大学時代の友人に15年ぶりに再会し、驚く。前半のハイドンは、交響曲といっても、チェンバロが入ったり、3楽章形式だったりと、バロックから古典への移行期の曲であることが良くわかって、けっこう面白かった。

 15分ほどの休憩を挟んで、マーラーの交響曲第9番。

 マーラーの第9番というと、どうしてもバーンスタイン/イスラエル・フィルの演奏を思い出してしまう...といっても、私自身は実は聴いていない。生でこれを聴いた友人が、いまだに「あのときは...」と語り出すので、うらやましく思っていた。その前だと、クベリークの来日演奏会のこと。たしか、最初は日比谷公会堂でマーラーの9番をやることになっていたが、クベリークが難色を示し、結局東京文化会館で演奏されたと記憶している...。 今日の演奏も、もしかしたら...と期待をして、シートに身体を埋める。座席は、P席の最後列だがセンター。

 そうそう。ハレ管弦楽団で面白いなと思ったのは最初のチューニング。普通はコンサートマスターが出てきてチューニングをして、指揮者が出てくるのだが、ここは、コンサートマスターの隣に座っている人(これもコンサートマスターか(笑))がチューニングをして、それがすんでからコンサートマスターが出てきて、それから指揮者が出てくるという段取り。
 ケント・ナガノが登場。拍手を浴び、指揮台に向かう。さぁ、身体が震えるような演奏を聴かせてくれよ〜と祈る。

 第1楽章。低い弦の響きからハープへ。そしてホルン。それから、さざなみのような弦の響き。しかし...何か物足りない。あまりにサラサラと流れ過ぎる。もっともっと粘っこい音楽じゃないのかな。マーラーって。ちょうどナガノの真正面なので、指揮を見ていたが、振りが細かくて直線的過ぎるような気がした。そのためか、演奏もチョコマカとしていて、戸惑うばかり。

 第1楽章が終わったところで、どういうわけだか、拍手がわく。「感動のあまり」というのではなさそうだ(笑)。ハイドンが20分くらいの曲だったから、マーラーもこれでおわりと思ったのか(^_^;)。第2・第3楽章は、まぁまぁ。とくに第3楽章はオケをかなりならしてくれていた。

 第4楽章。冒頭。ナガノが物凄い勢いで振った割りに、弦の豊かさがない。もっと慟哭のような響きがでてこないと、この楽章は...。最後の消え入るような、死を暗示するようなところは、すごくよかったけど、その前がもっと鳴らないとなぁ...。

 ぁ。おわっちゃったよ。

 終演後は、長く続く拍手。明らかにアンコールを求めている。「マーラーの9番のあとにアンコール曲をやって欲しいわけじゃない。曲が素晴らしかったから拍手を続けているんだよ。」という拍手ではない。団員もほどほどに席を立てばよいのだが、動かないから、延々と拍手が続く。

 結局6度目くらいのカーテンコールで団員が引き上げたが、朝比奈現象まで発生(苦笑)。まぁ、最後まで拍手をしていた私も私だが。正直いって、たまたま2700円でチケットが手に入ったこと、それからマーラーの9番を生で聴く機会を得たこと、それが収穫だった。あと、大学時代の友人に久々にあったことか。

 帰宅中の車内で、プログラムを眺めていたら、ハレ管弦楽団の紹介で、バルビローリが急死した後、ロッホラン、スクロヴァチェフスキを監督に迎えたがパッとせず、ケント・ナガノを迎えて良くなったみたいなことを書いていたが、何言ってやがると思った。こいつはスクロヴァチェフスキの指揮するハレ管を聴いているのか。ブラームスの交響曲全集、タコ5、タコ10、ブル4など素晴らしい演奏ばかりじゃないか。

 要するに、私の期待が大きすぎたのだ。バーンスタイン/イスラエル・フィルのマーラーに匹敵する感動を得ようとしたのが間違いだったのか...でもあと10年経ってから、もう一度ケント・ナガノの指揮でマーラーの9番を聴いてみたい。
======================= 1996/06/17(Mon) 00:34:16 ====================


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