合唱団OMP第14回定期演奏会


日 時:平成8年6月2日(日)午後3時30分〜
場 所:昭和女子大学人見記念講堂
出 演:合唱団OMP
    指   揮:栗山文昭(2・3)
          宮澤 彰(1)
    演   出:加藤 直(3)
    照   明:木下泰男(3)
    舞台監督:北村雅則(3)
    東 弘英(3)
曲 目:1.ハウエルズ/レクイエム
     2.武満 徹 /混声合唱のための《うた》
             明日ハ晴レカナ、曇リカナ
             島へ
             死んだ男の残したものは
             小さな空
             ○と△の歌
             翼
             さようなら
             さくら
    3.柴田南雄 /宇宙について


 国内の、大学合唱団以外の合唱団の演奏を聴くのは、10年ほど前に東京リーダーターフェルの演奏会を聴いて以来だと思う。 団員の方から自由席券を2枚分けてもらった後で、やっぱり指定席にしておけばよかったかな〜と思ったことがあった。しかし、当日来てみると、指定席の指定範囲が意外と狭い。人見記念講堂に行ったことのある人ならわかるかもしれないが、1階客席の前半分と後半分の間に広い通路がある。この通路を挟んで後半分の部分の一番前の(つまり広い通路に面した)列の、右側のブロックに席を獲ることができた。なぜここを獲ったかというと、柴田南雄作品、しかも「宇宙について」というシアターピースがあるからである。当然メンバーが客席に乱入するはず。それならば、なるべく接近しているところのほうが面白いとの目算である(実際にあそこまで凄いことになるとは思わなかったが(^_^;))。

 1曲目は、ハウエルズのレクイエム。ハウエルズというのは20世紀イギリスの作曲家ということであるが、曲はもちろん作曲者の名前も、今回が初耳であった。声がとてもよく出ていた。しかもパート間のバランス、パート内の統一がよくとれているからであろうが、響きがとても美しく、しかも弱音になってもそれが崩れない。

 自分の「当たる音域」だけを強く歌うのは簡単である。そうでない音域を、音量を押さえながらも如何に息を通して唄うか...この難題をかなり高いレベルでクリアしているとみた。

 2曲目は、武満徹の《うた》。ステージ衣装は、ややリラックスしたものに。CLAコンで歌うことになってから、何度もCDを聴き、譜読みをしたので、とても親しみのある曲になった。栗山先生を生でみるのは、15年ぶり位だろうか...石橋メモリアルホールでの「知ら名」で千葉大学合唱団を率いての演奏のときだった。だから、ステージに登場したときも(あれっ。あんな顔だったかな...)というのが第一印象であった。そらま〜、当時は私だって大学3年だったんだからあたりまえだが。

 演奏は、たっぷりと「間」をとった馥郁たるものであった。特に心にしみたのが、「死んだ男の残したものは」と「小さな空」。「小さな空」はゆったりと、空を見上げながら歌っているという感じ。特にハーモニーが奇麗だった〜。病気云々は別にしても、指揮ぶりは、15年前とはかなり変わったように思えた。昔は、もっとガンガン鳴らすという印象だったのだが...

 3曲目は、柴田南雄の「宇宙について」。柴田南雄といえば、「萬歳流し」「追分節考」「念仏踊り」など、いわゆる「シアターピース」が思い出される。今回の「宇宙について」は、演出・照明等、「動き」にも優れたスタッフの助力を得ていることから、果たしてどんなステージになるのか。

 緞帳があく。正面にスクリーン。「宇宙について」という文字が浮かぶ。それからは、不思議な世界。あるときには、ごくごく普通のスタイルの合唱曲があらわれたかと思うと、また前衛的な響きの歌が聞こえたり。そして、ろうそくのようなペンライトを手に、メンバーが客席に降りてくる。「祈り」というにはあまりにおどろおどろしい響きの声が客席に満ちてくる。

 私の席は、左と前が通路に面している。いきなり、5人が私の前に立ち、何やら唱えはじめる。これが萬歳だったら、おひねりを渡すところだが、どうもそういう雰囲気ではない(^_^;)。「あなたの健康と幸せを祈らせて下さい」というのに捕まったような感じがしないでもない(笑)。しかたなくじっと身を凝らして、通り過ぎるのを待つ。

 しばらくして、再び私の席の前に、小さな一群ができる。究生さんがいる。そしてスポットがあたり、私の前の一群が、踊りながら歌い出す。しばらくすると、静かになり、またしばらくすると歌い出す。

 やがて、客席内を大きく円を描きながら歌い歩く。「歩く」といっても、かなり、速い。一人一人の声を聴いていたが、よく息切れせずに歌えるものだと感心した。

 真っ暗になり、ピンスポットが栗山先生を照らす。拍手が鳴り響く。誰も座っていない椅子に花が供えられる。柴田南雄先生にささげられたものだろう。アンコールは、「遺作」とスクリーンに表示されている。ということは、「無限曠野」だろうか。それにしても、武満・柴田という優れた作曲家を相次いで失った悲しみが、演奏が素晴らしければ素晴らしいほど強くなるというのは、実に皮肉なものである。

 次回は来年の11月ということであるが、叶うことならコダーイの合唱曲を聴いて見たいと思う。
======================= 1996/06/03(Mon) 01:21:42 ====================


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