もう一つの「シュターツオーパーの名手たち」−ウィーン国立歌劇場合唱団−


ウィーン国立歌劇場合唱団

日時:2001年7月5日(木)午後7時開演
場所:武蔵野市民文化会館
出演:ウィーン国立歌劇場合唱団(合唱)
    エルンスト・ドゥンスヒルン(指揮)
    板谷和子(ピアノ)
曲目:ワーグナー/「ローエングリン」から婚礼の合唱「真心を込めて御先導いたします」
    モーツァルト/「イドメネオ」から運命の合唱「何と残酷な誓い」
    ヴェルディ/「マクベス」から亡命者達の合唱「虐げられた祖国よ」
    マスカーニ/「カヴァレリア・ルスティカーナ」から復活祭の歌「歓喜の歌をうたおう、主はよみがえられた」
    ビゼー/「カルメン」からハバネラ「恋は野の鳥」
    ヴェルディ/「ナブッコ」から「行け、我が思いよ、金色の翼に乗って」
    モーツァルト/「魔笛」から僧侶達の合唱「おお、イシスよ、オシリスよ」
    ウェーバー/「魔弾の射手」より狩人の合唱「この世に狩りほど楽しいものはない」
    シューベルト/セレナード(ソプラノ独唱と男声合唱のための)
    カーン(ディミトロフ編)/オール・マン・リヴァー
    ヨハン・シュトラウス(子)/ワルツ「美しく青きドナウ」
−−−−−−(休憩)−−−−−−
    ビゼー(シュテラー編)/カルメン(序曲とハバネラ)
    ジュネ(ディミトロフ編)/イタリアン・サラダ
    レハール/「メリー・ウィドウ」から浮気ねずみの歌
         /「メリーウィドウ」からヴィリアの歌
    オッフェンバック/「ホフマン物語」から舟歌
    カールマン/「チャールダーシュの女王」から「女性がいなけりゃこの世は無味乾燥」
    レハール/「メリーウィドウ」から女・女・女の行進曲
    カールマン/「チャールダーシュの女王」から「ヨイ・ママン」
    ヨハン・シュトラウス(子)/「こうもり」から第2幕終わりの部分


 ウィーン国立歌劇場の屋台骨といえば「ウィーン・フィル」ということになろうが、もう一つ忘れてはならないのが合唱とバレエである。その合唱団が初来日。すばらしい演奏を聴かせてくれた。
 前半はオペラの名場面集。見れば判るように、純粋な合唱だけの場面ではなく、アリアと合唱というものが多い。独唱はどうするのかと思ったら、何のことはない。団員が代わりばんこにつとめたのであるが、これがまたうまい。日本人の「なんちゃってオペラ歌手」「コスプレオペラ歌手」など足元にも及ばない。そして、合唱曲といっても、日本の合唱団のようにぼーっと棒立ちで歌うのではなく、あくまで「国立歌劇場」からその場面を切り取ってきたもの。狩人の合唱などは、完璧に演技がついている。このあたりレパートリーの強さというところ。ナブッコはヴェルディ・イヤーの今年がプレミエ。魔笛は去年がプレミエだったし。ほとんど毎日代わる代わる違う演目に出演し、あの水準を維持しているのだから大したものである。
 指揮のドゥンスヒルンは、我々がウィーン初見参の際にみた「リエンツィ」を振った指揮者である。もともとは合唱指揮者であるが、国立歌劇場のピットにも入れる力をもっているということ。このあたりが、「合唱」というたこつぼに入っている日本のギョーカイとはちと違うところだろう。
 後半の頭に、日本人の団員が演目紹介。アルトとバスに日本人が1名ずついる。後半は指揮者なしで、まずはカルメンの序曲とハバネラを男声だけで演奏。キングズ・シンガーズのようなノリ。それから「イタリアン・サラダ」はいかにもイタオペにありそうな節回しが次々と出てきて、オペラ好きにはうけていた。
 そしてこの後は、まさにウィーンの夜会。かなり速いチャールダーシュのような踊りが入っているにもかかわらず、全くアンサンブルが乱れないのに驚かされる。さすがに、舞台で鍛えられた合唱団だ。そしてそれぞれの曲のソロがまたすばらしい。メリーウィドウの「ヴィリアの歌」などは、ついホロリとさせられてしまった。
 今年が初来日だったとのことであるが、ぜひ来年もきてほしい。タンホイザーの「巡礼の合唱」やオランダ人の「水夫の合唱」、トロヴァトーレの「アンヴィル・コーラス」なんかも聴いてみたい。


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