大阪フィルハーモニー交響楽団第39回東京定期演奏会


日時:2000年7月23日(日)午後2時30分〜
場所:サントリーホール
出演:7月21日と同じ
曲目:7月21日と同じ

 中一日おいての1番・3番でしたが、今日の方が出来が良かったと感じました。この日もサントリーホールはほぼ満席で、しかも開演前からきっちりと埋まっていました。民音のときのように、前半にまとまって空席があるようなことはありませんでした。また会場の雰囲気も、21日の民音主催のものより、この日の方が良かったように感じました。

 チューニングを終え、シンと静まりかえったホールの扉が開き、朝比奈先生が登場してきたところで、割れんばかりの拍手。5月のN響定期では、演奏前の拍手の大きさに文句をつけた奏者側の意見が出ていましたが、拍手には「演奏への評価」だけではなく「応援」「期待」のメッセージが込められているという聴衆側の気持ちが全く理解されていないことが、よく判り、非常に参考になりました(笑)。

 前半の1番は、21日よりも心なしか早めのテンポでしたが、特に第1楽章はそれが功を奏していたように感じました。第3楽章の頭で、ちょっと乱れがありましたが、そんなちょっとした疵をも のともしないボリュームたっぷりの音楽でした。第4楽章の頭のダァーン!というところから、アレグロ・モルトに入っていくあたりは、棒はよくわからんのですが(^_^;)、きっちりまとまって入っていくあたりは、さすが大フィルといったところでしょう。前半が終わったところで、嵐のような拍手。それにしても、ベートーヴェンの1番をこんなにも堂々とした大芝居として聴かせてくれるのは、朝比奈先生くらいのものでしょう。

 後半の英雄も、実に堂々とした演奏。実は21日のときは、私の体調が今ひとつで集中力を欠いていたためか、第1楽章のリピートがあったかなかったか判らなくなっていたのですが、ちゃんとリピートはありました。第2楽章も、ゆーったりとしたテンポで、途中の金管がワーッとなるところは実にパワフル。そして最後はすすり泣くように、無音の世界へ。この日は幸いに無粋なブラアボは、なし(笑)。第3楽章のトリオのホルンは、もう少し鳴ってくれるといいなぁと思いましたがひっくり返ったりすることはありませんでした。第4楽章は、オーケストラの「米の飯」である弦を堪能しました。2階席から俯瞰してみていると、グイグイ弾いているのがよく判りました。

 終演後は熱い拍手。管のセクションを立たせたりして、3度ほどのカーテンコールのあと、長い参賀が1回。無理に何度も引っ張り出さないのは、いい傾向だと思います。

で、なぜ私が朝比奈ファンなのかと問い返してみたのですが、経歴への親近感(法学部出身)は別として、「音楽が口に合う」ということにつきます。特に今回のようなベートーヴェンの1番・3番といった他に様々なアプローチのしかたのある曲を朝比奈先生の棒で聴いてみて、よく判りました。別に、朝比奈流が「本物」だとか「ドイツ音楽の本流」だとかいう修飾語をつけるつもりもありません。第一、何が「本物」で「ドイツ音楽の本流」なのか、私なんぞに判るわけがない。

 朝比奈氏を揶揄する一部の評論屋が、「朝比奈の音楽は洋食だ」と評したことがありました。本物のフランス料理から日本人の口に合うように作り上げられた「洋食」をフランス料理と思って食べているというのです。

 前述の理由から、「朝比奈洋食論」自体には、異を唱えるつもりは全くありません。フランス料理であれば何度か食べたことがあるので洋食との比較はできますが、万人が「本物のドイツ音楽」と評価している音楽に未だ接したことがないので、比較のしようもないのです。というか、仮に「洋食」であってもなんら構わないと思っています。

 それ以前にこの評論屋は大きなミスを犯しています。洋食をフランス料理よりも下位低劣のものと見ているのです。たしかに洋食は一般大衆文化として根付いていますが、両者はまさに似て非なる存在として別のレールを走っているのです。したがってどちらが高級であるかを論ずること自体ナンセンスなのです。また、見た目はフランス料理であっても、古典的な技術が抜けてしまった料理よりも、たとえばブイヨンをしっかりとるとかルーをきちんと炒めるといった基本が継承された洋食のほうが、実は、古典的なフランス料理の本質には遙かに近いということもあるのです。おそらくは、この評論屋はジャンク・フードばかり食べていて、食に対する感覚は著しく鈍磨しているのでしょう。

 なんだか話はえらく脱線しましたが(^_^;)、要は「好きだから聴いているのだ」ということです。だからこそ、また真夏の朝から11月の前売りを買いに並んだり、今度こそ大阪への巡礼を実行に移そうと考えているのです。
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