新国立劇場「リゴレット」
日時:2000年6月20日(火)午後6時30分〜
場所:新国立劇場
出演:アレクサンドル・アガーケ(リゴレット)
アンドレア・ロスト(ジルダ)
ピエトロ・バッロ/ティート・ベルトラン(マントヴァ侯爵)
彭康亮(スパラフチーレ)
高尾佳余(マッダレーナ)
泉良平(モンテローネ侯爵)
河野めぐみ(ジョヴァンナ)
久保和範(マルッロ)
村上敏明(ボルサ)
山田祥雄(チェプラーノ伯爵)
菊池美奈(チェプラーノ伯爵夫人)
前田祐佳(小姓)
藤田幸士(牢番)
新国立劇場合唱団/二期会合唱団(合唱)
東京シティバレエ団(バレエ)
新星日本交響楽団(管弦楽)
レナート・パルンボ(指揮)
アルベルト・ファッシーニ(演出)
当初、ヌッチ、バッロ、ロストというキャストにひかれて大いに期待していたのですが、まずはヌッチが脱落。それもチケット発売直後に健康上の理由で降板とされながら、ウィーンでは歌っていたというのを聴いて、なめとんのかと思ったのですが、心臓疾患で航空機による長距離の移動に制限がついてしまったということらしいです。だったら、差し支えない範囲でそう発表すればいいと思うのですが。日本の聴衆はウィーンでヌッチが歌っていることなど判るわけがないと思ったのでしょうか。二国のスタッフは。
幸い、アガーケが見事な歌声を披露してくれました。リゴレットというと、どうしても大好きなブルソンのイメージがあるのですが、アガーケのリゴレットも、板に付いた役という感じで、「悪魔め、鬼め」などのアリアはもちろんのこと、演技も実に見応えがありました。
ロストは、去年のウィーン・フィルの屋外コンサートで初めて聴いたのですが、安定した歌声。高音部もよくのびていて、アガーケとの重唱もよかったです。
残念きわまりないのは、バッロ。当初11日から歌うはずだったのが、体調不良で18日からの出演となり、この日も最初の「あれかこれか」あたりは、まぁまぁの調子で、(お〜。大丈夫じゃん)と思っていたのですが、第2幕の最初のアリアの終わりで壊れてしまい、音が半音近く下がってしまいました。さすがに会場凍り付き、厳しいブーイング。ショックでした。まぁ、あれで「賞賛」であれ「暖かい激励」であれ、拍手だけで済ませたら何を聴いているのかってことになりますから、致し方ないとは思いますが、しかし、声って言うのはきついですね。もちろん楽器だってごまかしが利くわけじゃないけど、ああいうアリアで失敗したら、逃げ場がないですから。
結局、2幕の終わりのカーテンコールには、ロストとアガーケだけが出てきて、バッロは出てこずじまいでした。
で、3幕の始まる前に、五十嵐喜芳芸術監督が舞台に出てきて、バッロは歌えないので、11日とかに代役を務めたティート・ベルトランが第3幕を歌うという説明。ところが、このティート・ベルトラン、少なくとも私のイメージするマントヴァ侯爵の声ではない。声に軽さが全くない。ただ力任せに歌って伸ばしているだけ。一番聴かせどころの「女心の歌」を、あの声で聴かされてはたまったものではない。代役を用意するにしても、もう少し似た声質の歌手を捜すということができないものだろうか。冗談抜きで、五十嵐監督の声のほうがいいと感じたくらいだ。
そんなわけで、テノールに関しては劇進行「処理」役(いなくて止まるよりまし)につきあわされる羽目になったが、アガーケ、ロストの熱唱で、まぁまぁ切れずに帰宅することができました。もっとも、これも生オペラ道の醍醐味かもしれませんが...。
しかし、バッロは22日にオケ伴奏のコンサートが予定されているのだけれど、あの調子だと中止かなぁ...。
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