NHK交響楽団1408回定期演奏会(Aプロ2日目)


日時:2000年5月26日(金)午後7時〜
場所・出演・曲目:初日と同じ。

 昨日の席は前から3番目であったが、今日は1階の最後列。オケ全体を見渡せる席だった。昨日は当日券が若干出ていたようであったが、今日は完全に売り切れ。しかし、どういうわけかまるまる一列ぽっかりと空いているようなところもあった。勿体ない話だ。

 昨日の演奏を聴いて、いろいろと複雑な思いで一日過ごしてしまった。こういう気持ちで演奏会に臨むのは、あまり心地よくないが、これも人生だろう。今日は、あまりあちこち動き回りたくなかったので、30分前には席に着いてしまった。N響定期は開場時間が早い(室内楽の楽しみもある)ので、時間があるときはゆっくりと過ごせるので助かる。初日は前の方の席だったので、管セクションに誰がいるかさえ判らなかったが、今日はよく見えた。

 7時過ぎ。オケのメンバーが入ってくる。緊張が高まる。チューニングが終わってしばしの静寂の後、朝比奈先生の登場。凄い拍手。静けさのなかに、原始雲が広がっていく。段々と分厚くなっていき、金管が重なっていく。先生の棒を見ていると、心なしか、昨日よりは見やすいように感じた。オケのメンバーも、昨日よりは慣れたのか、戸惑いながら手探りで弾くという雰囲気は、少し薄れたように感じた。出来は甲乙つけがたいが、聴いていて、すくなくとも自分にとっては今日の方が安心だった分、満足度は今日の方が上だった。金管も良くなっていたし、百瀬さんのティンパニもさえていた。ただ、全体としてやはり第3楽章は今ひとつ裁き切れていないという感じがした。

 それにしても、ブルックナーの交響曲の中でも9番というのはやや異質だ。5番とか8番とかだと、もちろん緩やかな楽章もあるけれど、基本的に前へ前へというノリで演奏をすることができる。だからフィナーレも爽快だし、多少棒がぎくしゃくしても音楽が止まるようには感じない。ところが9番はうねるような絡み合いがあったり、テンポが大きく変わったり...もの凄くエネルギーを消耗させる曲である。特に第3楽章などは。終演後は例のごとく熱い拍手が続いたが、普段と比べて、ひどくお疲れのように感じた。現に、オケが退場してからの答礼も一度だけ。拍手は延々と続いたが、N響の曽我理事長が袖からあらわれ、お疲れで出てこられないとのことだった。昨日に続いて、楽屋口の車寄せの近くから、先生をお見送りした。

 9番という曲のキャラクターもあるだろう。この曲聴いて血がたぎるというのとは違うし。5番とか8番とかの演奏のときのように、こっちが圧倒されて元気をもらってニコニコしてかえって来るという雰囲気にはならない。それにしても、N響は2日続けて、よく朝比奈先生の要求に応え、また本番でも、難しい棒のもとであれだけの音楽を作り上げてくれたものだ。以前は、出来が今ひとつだと「棒がわかりにくくたって、指揮者の意を汲んで音楽を作り上げるのがプロのオケだろ。」なんて思っていたが、物事には限界がある。どんなにすぐれたオケでも、ちゃんと振って欲しいところは振って欲しいはずだ。

 その一方、朝比奈ファンとしては、今回のように、「目に見える指揮」とは関係なしにオケからいい音が出ているとき、なんとなく複雑な心境になってしまうのである。次回は、11月の初旬。今度は4番一曲で勝負である。当然のことながら、チケット獲得に動くので、是非良い演奏になることを期待している。そして、可能であるならば、その次のシーズンでは是非5番を取り上げて欲しい。 ========================00-05-26(Fri) 23:16========================

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